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[No.128] 人間生活と技術(7) 住まいと電気自動車の融合を実践する(効果の検証 その1)

[No.128] 人間生活と技術(7) 住まいと電気自動車の融合を実践する(効果の検証 その1)_b0250968_09033226.jpg当ブログNo.119No.121にて「人間生活と技術(6)住まいと電気自動車の融合を実践する(その1, 2,3)」と題して、電気自動車と住まいに関わる省エネ、創エネ技術の融合システムによる個々の住宅の範囲でのエネルギーの有効利用と地球環境負荷低減化の両立可能性について、鎌倉市にある自宅(Photo 1)での導入実績を踏まえた議論を行ってきました。   [※イソダ工務店撮影]

 Fig.は自宅で導入した、“太陽光発電(PV & PVPC)と電気自動車(EV)をV2Hvehicle tohome)の機能を有するEVパワーステーション(EVPS)によって融合させたシステム”(以下、融合システムとの略記も)の要素構成と要素間の電力エネルギーのフローを示した図で、以前のブログ掲載図を若干改訂しています。前出のブログ記事での融合システムの導入にともなう各種実績データは、同図の実線の矢印で示された電力エネルギーに関わるもので、同システム導入に伴う移行期を含んだ20194月から20203月までの1年間を対象にマイホームにおけるエネルギー利用とそれに伴う経費の状況をとらえたものでした。この間、電気自動車(EV)の導入は既になされていたものの、外部の充電スタンドへの依存から自宅充電への切り替えおよびV2H機能の付与は、太陽光発電(PV & PVPC)の201987日の設置、EVパワーステーション(EVPS)の2019918日の導入によって、はじめて行うことができたのです。

 したがって、本ブログでは201910月から20209月までの1年間に焦点を当て、太陽光発電量の年間変動、四季を経ての冷暖房や給湯負荷の変動、生活行動の季節変容などを踏まえた実績をとらえ、PVEVEVPSによる融合システムの導入効果について検証してみたい」と思います。

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(1)稲村の家の電力システムの構成要素と電力フローの接続関係

 稲村の家の電力システムの特徴は、オール電化で1FについてのみPVEVEVPSにより融合したシステムを組み込んでいることです。ただし戸建住宅としては1,2Fから成り、系統電力との間での接続関係が1F2F2世帯住宅として構成されており、系統電力との需給電力量測定や電力料金の売買支払いは独立になされています。また、1Fの融合システムには1F用エコキュートへの系統電力からの電力フローが含まれていないので、以下の議論では、1FについてもPVEVEVPCによる融合システムとEVならびにHome(宅内)の空調、照明、家事家電等との電力フロー(実践の矢印)を連結させた部分を1Fコアシステム”、これと切り離されて系統電力と直結させた1F用エコキュートシステム”を区別して扱うものとします。

 そこで、以前のブログでは触れていなかった2Fの電力フローと1F用エコキュートへの電力フローを加えて、稲村の家全体(1F,2F)の電力システムを対象にしたFig.1の構成要素とそれらの間の電力フローに付した記号の説明をあらためて以下に示します。

 E1:系統電力からの1Fへの全買電力量[kWh]

C11Fコアシステムでの消費電力量 [kWh]1F用エコキュートの消費電力を含まず)

  Ew1F用エコキュートでの消費電力量(系統電力から直接供給)

 E2:系統電力からの2Fへの全買電力量[kWh]

C22FHome(宅内)での消費電力量 [kWh]2F用エコキュートの消費電力を含む

   (実際はE2=C2とみなしている)

さらに、1Fコアシステム関連では

 E:系統電力からPVPCへの買電力量 [kWh]

 S PVからPVPCに取り込まれる電力量[kWh]

RPVPCからの系統電力への余剰分の売電力量 [kWh]

P PVPCからEVPSに送られる全電力量 [kWh]

F EVPSからEVへの充電力量 [kWh]

B EVからEVPSへの放電力量 [kWh]

D EV走行用の消費電力量 [kWh]

LEVPSによるEV電池との充放電過程のシステム損失電力量 [kWh]

という記号を用いています。

これらの各電力フロー間には、Fig.1の矢印で示された各電力フローの接続関係に従って、電力量に関する関係式を、以下のように導入しています。

 ・1Fの系統電力からの買電力量の構成について

   (1)   E1 = E + Ew

 ・2Fの系統電力からの買電力量について

   (2)   E2 = C2

 ・PVPCにおける電力フローの入出力収支バランスについて

   (3)   E + S = P + R

ただし、PVPCの電力変換効率は96%とされるが、ここでは100%の返還効率と見なしている

 ・EVPSにおける電力フローの入出力収支バランスについて

   (4)   P = F – B + C1

 ・EV電池における充放電の電力フローバランスについて

   (5)   F = D + B + L

 以下では、これらの関係式を使いながらデータの分析を進めて行きます。


(2)ブラックボックス的な観点から

 Fig.1の系統電力から見た稲村の家の1F,2Fとの授受電力の推移を、売買電力量あるいはそれに伴う料金授受の各月の経過としてとらえます。すなわち、1Fコアシステムの内部には踏み込まず、外部から1F用エコキュートを含めた系統電力との関係についてブラックボックス的な観点で実績を検討します。


(2-1) 系統電力との電力量の授受における家庭の電力負荷の軽減

(a) EVPSによる融合システム導入後の系統電力量授受の年間実績

[No.128] 人間生活と技術(7) 住まいと電気自動車の融合を実践する(効果の検証 その1)_b0250968_20540985.jpg Fig.2は、EVPS導入直後の1年間(2019/102020/09)の系統電力からの1F,2Fへの買電力量E1,E2と、1Fからの系統電力への売電力量Rの月別の推移を示しています。また、E1,E2のそれぞれについて、昼間、朝晩、夜間の時間帯別の買電力量の内訳を月別に示したのがFig.2 (a)(b)になります。

まずFig.2について見てみます

1F,2Fの合計の月毎の買電力量(E1+E2)を比較すると、

最大値は2019/121370kWh/月、最小値は2020/4730kWh/月で倍半分となっている、

冬と夏に山が、春と秋に谷があり、冬と夏では冬の消費が多い

PV発電の余剰分の月毎の売電力量Rについては、

春から夏は400kWh/月以上の高水準(但し、7月は異常な長雨で低下)、秋から冬は200kWh/月に留まり、「稲村の家の電力消費の売電による補償効果は季節により大きく異なる」

[No.128] 人間生活と技術(7) 住まいと電気自動車の融合を実践する(効果の検証 その1)_b0250968_18484085.jpg [No.128] 人間生活と技術(7) 住まいと電気自動車の融合を実践する(効果の検証 その1)_b0250968_18503966.jpgつぎに、Fig.2(a)(b)を用いて、日内の時間帯別の買電力量を見てみます。

1Fの買電力量E1ではEVPSの作動スケジュールのプログラム設定により、

・昼間[10:00-17:00]は、PV発電力を可能な限り活用し、不足が生じてもEV電池からの放電を利用するので年間を通して系統電力からの買電は殆どない

・朝晩[7:00-10:00 & 17:00-23:00]は、EVの電池からの放電で家事や冷暖房が賄える、ただし、EVと独立な1F用エコキュート電力Ewの夏以外での朝晩の消費分が若干含まれる

・夜間[23:00-7:00]は、安価な深夜電力で、昼間・朝晩の放電で低下したEV電池を回復させる電力量E1F用エコキュート電力Ewの消費分の大半を加えたものとなる

よって1Fでは系統電力からの全日の買電力量の大半の購入を夜間に行い、1Fだけの系統電力との売・買電力量のバランスは、春・夏は良好だが、秋・冬は売電が買電の半分以下」となります。

2Fの買電力量E2ではPVEVとの連動はなく、通常の独立した住宅として系統電力からの買電を行っていることから、「給湯のエコキュート用電力消費を夜間に行う以外は住生活における電力需要に見合った時間帯での消費電力構成となっている」のがわかります。

(b) EVPSによる融合システム導入前後の系統電力量授受実績の比較

[No.128] 人間生活と技術(7) 住まいと電気自動車の融合を実践する(効果の検証 その1)_b0250968_21114401.jpg 1FへのEVPSによる融合システムの“導入前”の実績として、導入直前の20178月から20197月までの丸2年間における稲村の家全体(1,2F)の需給電力量の推移から月毎の平均値の経過として整理し、前述の融合システム導入後の1年間の実績と比較してみます。

 Fig.3に稲村の家(1F,2F)の年間の全売買電力量について、融合システム導入前後の対比を、1F,2Fの買電力(E1+E2)PV発電の余剰分としての売電[No.128] 人間生活と技術(7) 住まいと電気自動車の融合を実践する(効果の検証 その1)_b0250968_21115268.jpgRの内訳で示しました。さらに、Fig.3(a)(b)には、その年間のE1,E2のそれぞれの時間帯別買電力と売電力の内訳を、導入前後で対比させて示しました。

それらから、以下のことが読み取れるかと思います。

・導入前後で買電力量はE1800kWh/年の増、E2で微増、(E1+E2)900kWh/年の増加

・導入前後で買電力量のE1,E2比較では、導入前は5100kWh/年を挟んでE2E1より500kWh/年程多く、導入後は5500kWh/年を挟んだ同レベルでE1E2より僅かに多く逆転

[No.128] 人間生活と技術(7) 住まいと電気自動車の融合を実践する(効果の検証 その1)_b0250968_21115832.jpg・導入後のPV由来の売電力量R4000 kWh/年で、年間の買電力量E15650kWh/年の70%をカバーし、買電力E1と売電力R間の収支として1650kWh/年の買電力と等価ともみなせる

1Fの買電力量E1の時間帯別構成比は、導入前後で一変し、昼間はほぼゼロに、朝晩も1/4程度になり、夜間が90% 近くを占めるようになりました

2Fにおける買電力量E2の時間帯別構成比は、導入前後で不変

 すなわち、融合システムの導入前後では、年間の系統電力に対する売買電力量について、

「稲村の家全体の買電力量(E1+E2)は、導入後に1000kWh/年弱の増加となったが、その大半が1Fの買電力量E1の増加による」

1Fの買電力量E1の大半が夜間電力であって、その夜間電力の内容は、EVの電池が消費した、朝晩・昼間のC1EVの走行によるDの補充に必要となる電力の深夜における充電分F1F用エコキュート電力Ewの夜間消費分の合計とみなせる」

「稲村の家の実績としては、その1Fの買電力量E1の夜間購入分の80%程が、PV由来の余剰による売電力量によって見合いがとれていること」

が興味深いところです。


(2-2) 系統電力との売買電力料金にみる家計負担の軽減

[No.128] 人間生活と技術(7) 住まいと電気自動車の融合を実践する(効果の検証 その1)_b0250968_21180774.jpg 上述の(2-1)では系統電力との売買電力について電力量ベースでとらえましたが、ここでは料金ベースでとらえ、家計負担の軽減実績について検討します。

 Fig.4に稲村の家(1F,2F)の年間の総売買電力料金について、融合システム導入前後の対比を、1F,2Fの買電力(E1+E2)PV発電の余剰分としての売電力Rの料金の内訳を示しました。さらに、[No.128] 人間生活と技術(7) 住まいと電気自動車の融合を実践する(効果の検証 その1)_b0250968_21181710.jpgFig.4(a)(b)には、その年間のE1,E2のそれぞれの時間帯別買電力と売電力の料金の内訳を、導入前後で対比させて示しました。

[No.128] 人間生活と技術(7) 住まいと電気自動車の融合を実践する(効果の検証 その1)_b0250968_21182332.jpgこれらから、以下のことが分かったのです。

導入前後で買電力料金は1F 31千円/年減、2Fで微増

導入前後で買電力料金の1F,2F比較では導入前は125千円/年を挟み2F1Fよりやや多かったが、導入後は1F91千円/年、2F132千円/年で、1F2Fより41千円/年と大幅に減少

PV由来の売電力料金は97千円/年で1Fの年間買電力料金の106%と料金で売電が買電を上回った

1Fにおける時間帯別の買電力料金の構成は、導入前後で一変、昼間はほぼゼロに、朝晩も18%に圧縮されたのに対し、夜間は70% 近くを占めた

2Fにおける時間帯別の買電力の料金構成は、導入前後で大きな変化はない

以上、稲村の家におけるPVEVEVPSによる融合システム導入前後の系統電力に対する電力量と金銭の授受の1年間の実績を振り返りました。その内容を理解するときに、留意しておかなければならないことを2点挙げておきます。

1)1Fの電力消費におけるエコキュート消費分について: Fig.1に記されているように、1F用エコキュートでの電力消費分Ewは、系統電力からの1Fの買電力量E1に組み込まれていますが、EVPSによる融合システムとは切り離されています。例えば、EVPSによる融合システム導入後の1年間でみると、次節の「(3)システム分析的観点点から」で詳しく見ますが、1F用エコキュートへの投入電力はEw = 1291kWh/年でありE1 = 5669kWh/年の23%を占めます。このEwは融合システムの導入有無や作動状況によらず、1Fでのくらし方や外気温変動が年間を通して類似であれば、毎年ほぼ固定した電力を消費すると考えられます。

 2) EV走行のためのバッテリー充電用の電力消費について: 融合システム導入後は、Fig.1にあるようにEV電池の充電量Fの内、走行用エネルギーとしての消費電力Dは、EVPSから供給をうけており、EVPSに取り込まれる電力Pの中で賄われることになります。したがってEVPS導入前にはマイカーの走行エネルギーは、EV導入前はガソリン購入で、EV導入後は市中の充電スタンドでの電力購入で賄われていて、焦点の稲村の家の電力システムからは切り離され、外部化されていたことになります。

(2021/03/02 )

================= No.129へつづく ==================


# by humlet_kn | 2021-03-02 21:29 | 解かる | Comments(0)

[No.127]その人との出会いが(1) 絵画の手ほどき ― 徳子女史を偲ぶ

 筆者に絵画の手ほどきをいただいた菅徳子先生 [19572020] が先日亡くなられた。

 本ブログでも、No.63で “極楽寺・稲村ガ崎アートフェスティバル2014” の記事の中で紹介したことのあるモダンアーティストの「菅徳子」先生である。2012年に長岡で職を終え、実家のある鎌倉に居を戻して、夫婦同士でのご近所のお付き合いを始めてまもなく、著者は徳子先生から、ご自宅で行っておられた絵画教室にお誘いいただいたのである。これまでの半生で初めて、絵画というものに向き合うことになった。振り返れば、中学校の美術の時間以来のことであった。

 以下には、ほぼ19ヵ月の絵画教室でのご指導の過程を、筆者の拙い習作を用いながら辿ってみたい。

そして、徳子先生が育まれ愛された、自然の生気が溢れた、谷戸の丘上のご自宅の庭に立ち、御霊を見送ることができたことは、いつまでも筆者の心に刻まれよう・・・

風は秋 谷戸の丘上 アトリエを

恩師旅立つ 黄泉の海路へ

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2020/09/27記>

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# by humlet_kn | 2020-09-27 10:26 | 出あう | Comments(0)

[No.126]人間生活と文化(15) 対人距離とwithコロナ(2)

1.空間における集合行動にみられる人間の相互間隔について(No.125からのつづき)

(3)避難所における他者との距離による心身負担
 大震災や集中豪雨が次々と起こり始めている中で、新型コロナウイルス禍が避難所を含めた避難体制のあり方を見なおさざるをえない状況が生まれている。ここではまずは従来の近隣の体育館や公民館といった公的避難所における避難者の密集がもたらしてきた心身負担の実態について、他者との距離に着目して振り返ってみたい。
 筆者は阪神淡路大震災(1995/01/17)後、人の集合研究の一環として、災害時の避難所データ分析や被験者実験により、避難民の避難所内の空間配置がもたらす心身負担について探究を行ってきたので、ここで紹介しておこう。ちなみに筆者自身、長岡市在住時に中越地震(2004/10/23)、中越沖地震(2007/07/16)を実体験するとともに、東日本大震災(2011/03/11)からの避難民の行政支援現場を注視してきたことも貴重な経験となっている。

 ◆阪神淡路大震災時の避難所における人的距離と心身負担の分析[6]

 入手できた避難所内の滞在者分布の様子を撮影した写真3枚(写真7)を詳細に分析した。

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それぞれは、(a) 神楽小5日後、(b) 神楽小6カ月後、(c) 六甲小6カ月後の状況であるが、(a)(b)は同じ神楽小の震災直後の雑魚寝状態と6カ月後の人数も減り落ち着いた世帯ごとの整理された状態、(c)は6カ月後であるが間仕切りで世帯ごとの領域が区切られた余裕のある状態である。
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 これらの画像を幾何学的な座標変換により床面上の荷物、敷物、人物、パーティションの配置と通路部分の形状としてマップ化した上で、全避難所有効床面を50cmの正方形メッシュで区切った(図8)。
 避難民が避難所内の物的、人的な空間構成要素から被る心身負担としては、身体動作阻害、自己・家族の占有領域の侵害、外部者視線に晒されることに着目して、(r1) 身体伸長可能率、(r2) 領域侵害可能率、(r3) 視線防御率等の指標を設定し、(a),(b),(c)の画像について算出してみた。その算出方法の詳細は省くが、意味合いは以下の通りである。各指標は、
 (r1) (臥位)身体伸長可能率:着目メッシュの周囲全方向の空間領域で真直ぐに臥位姿勢を取ることを可能とする領域の割合(%)
 (r2) (平座位)領域侵害可能率:着目メッシュの周囲全方向の120cm~210cmの空間で平座位姿勢による相互の視線侵害が可能な領域の割合(%)、すなわち着目メッシュの周囲の社会距離近接相からの視覚的干渉の可能度を表す
 (r3) (臥位)視線防御率:着目メッシュの周囲全方向の250cm以内の空間領域で臥位姿勢で視線を合わせることを防げる領域の割合(%)、すなわち就寝時に他者による見られから護られる程度を表す
であって、対象避難所毎に、すべての50cm正方形メッシュの指標値の累積分布図(図9-1,2,3)を作成し、避難所間の比較を行った。
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 これらか見えてきたのは、阪神淡路大震災時の避難所内の被難民配置状況においては、
 ・手足を伸ばした就寝姿勢の確保は、どの避難所状況でも、方向調整をすればなんとかなっていた
 ・就寝時や休息時の他の避難者からの見られは一部の方向からは防御できるが、避難所(a)のパーティションのない震災直後の雑魚寝状態では難しかった

 ・他者とのコミュニケーション想定での社会距離の確保は間仕切りのある避難所(c)ではやや優位ではあるが、全体に難しい状況にあったといわざるを得ない。

 ◆間仕切り導入の心的負担軽減要件を被験者実験で探る[6]


 上記の避難所内の実態調査の結果、指標上ではあるが、視覚に起因する心的負担要因の影響が大きいと推察されたこと、障害物の高さの増加によって視線防御率が高まる傾向が見られたこと、加えて、間仕切りによって十分な視線防御が可能であることが明らかとなった。そこで,空間特性として間仕切り導入要件を取り上げ、心的負担要因の認識度への影響性の調査を、実験施設ホール内の被験者実験によって行ったので紹介する。
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 実験状況の間仕切りの配置位置を図10に示した。仕切りはH110cm×W90cmの段ボール板ユニットを組み合せて構成している。実験は2004年1月に成人男女9名に対して行われ、実験タスクは、紙コップの並び替え、折り紙による箱の作成を隣接空間の他者の作業を意識しつつ行ってもらうものであった。
実験調査の分析は、間仕切りの、プラス効果としては視線の遮断と視覚的外乱の低減を、マイナス効果としては圧迫感増加と開放感の低下に着目し、平座位の視点を越える十分な高さの間仕切りの配置要件の変更に伴う心的効果の主観判断の違いをとらえようとしたものであった。
 その結果、圧迫感の軽減効果は、①真横または真正面の遮蔽、②占有空間の広さ大、③遮蔽率小によってもたらされ、開放感の抑制効果は、①側方と前方の遮蔽度が大、②視覚的遠方知覚範囲が小、③占有空間の広さ小によってもたらされることがわかった。したがって、滞在者の体の向きとの関係で正面、側面、背後の間仕切り配置の工夫で、圧迫感、開放感を操作できる可能性が示されたのである。

 以上、阪神淡路大震災時の避難所をベースに筆者自身が関わった避難所内の被難民の占有空間配置の心身負担の観点からの実態と段ボ-ルによる仕切り空間の在り様について紹介したが、その後の中越地震(2004年)、[No.126]人間生活と文化(15) 対人距離とwithコロナ(2)_b0250968_11133486.jpg


東日本大震災(2011年)そして2016年の熊本地震と大震災を経て、さらに近年の異常気象下の集中豪雨や台風襲来時における避難所の対応は少しずつ進化してきたようにみえる。写真7東日本大震災時の仙台市の避難所で平座位での視線防御が確保され整然と区画配置がなされている。写真8熊本地震時の市内の避難所における段ボールベッドも活用した仕切り[No.126]人間生活と文化(15) 対人距離とwithコロナ(2)_b0250968_11132527.jpg

の様子
で、区画間の通路による隔たりが確保されている。しかしながら、現下の新型コロナウイルス禍によって避難所につきつけられたのは正に3蜜回避や社会距離確保という難問である。平座位での視線の防御、閉鎖感と開放感のバランスを図りながら他者との社会距離を確保するような段ボールのサイズ、開口部の配置による区画構成が可能か、更なる検討が必要となる。

2.Withコロナ下での人間の相互間隔を考える

(1)ヴァーチャルに社会距離を実現する

 テレワークへの働き方改革がもたらしたビデオ通信によるインターネット・テレビ会議やグループ会話が積極的に活用されるようになってきている。すなわち、上半身の姿勢や顔の表情をとらえて動画でオンライン双方向通信を行い、従来であれば、社会距離を保ちながら、対話や講義あるいはビジネス上の打合せ、会議を対面で行っていたところを、ICTを活用して視聴覚的に社会距離を疑似体感しながら遠隔対話を複数の参加者で共有しながら進めるものである。著者も、10年前に高等教育関連の職場で海外機関とインターネット会議で結んで遠隔の打合せや留学生入試に利用したことはあったが、動画の動きが荒く、接続費用もかなり要したと記憶していた。しかし、新型コロナウイルス禍がもたらした社会活動の制約により、退職後のボランティア参画をしている著者も、一気にこうしたシステムに引きずり込まれることとなった。
これまでの数少ない試用経験(図11)を通してであるが、Duo、SkypeとZoomを体感したところである。実感としては、コミュニケーション手段として従来の対面対話の機能を代替してくれることは間違いない。単純に非言語情報として上半身や表情の変化を見ながら、言語情報として音声伝達を双方向でほぼ実時間で行える。このときの対人距離に関するホールの距離区分の感覚的特徴と照らしてみると、ディスプレイ上の各参画メンバーの動画は、話者の顔や上半身をとらえ、その表情や身振り手振りを概括的に伝えてくれる。動画のコマ送り頻度は実用レベルが確保されている。したがってカメラと被写体人物との間隔にもよるが、個体距離遠方相から社会距離近接相に相当しており、一般的な業務上の打合せ、会議などへの双方向ビデオ通話システムの活用は適合性が高い。ただし参画人数についてはディスプレイの仕様にもよるが十数名というのが妥当なところかと思われる。
一方、個体距離遠方相としての活用法としては、親しい友人や職場内の社員での飲み会を遠隔で集って仮想で飲み会を擬して盛り上がるというのは、うまい使い方になるのではなかろか。これにより、物理的には遠隔の距離を確保しつつ、個体距離や社会距離が新型コロナウイルス感染リスクを侵さずに実現できるのである。ただし本来のこの距離での対話の際の嗅覚、触覚情報はなく、音場感や空気感が伝わらないことは致し方のないことであるが、そのことがかえって、参画メンバーが地位や立場などによらずに、対等に発言しやすい雰囲気を醸し出すのかもしれない。

(2)リアルに社会距離を確保する

 私達の日常生活では、買物や駅や電車・バスの利用などにおいて一定程度の不特定多数の人々との空間共有は避けられない。典型的にはスーパーマッケットの入場制限・待ち行列、レジ前の待ち行列において工夫がなされてきたのは経験済みである。そこでは店内や施設内の利用者密度を一定以下に抑え、レジ前や精算機前での行列の前後間隔や隣の行列との間隔を、床面マークで指示するなどがなされている。わが国では政府の推奨は“社会距離”の2mとされているが、現実には1~2m程度で幅のある運用がなされている。そしてレジ処理時の店員との距離は1mより近接しているが透明のシールドで隔てられている。(写真9-1,2,3
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 実際、グローバルにも各国の推奨の社会距離は1mから2mに分散しているようである(図12)。
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◆オーケストラ公演での奏者間距離への実験的検証

 ここでリアルな対人距離を、活用場面における必要性にこだわって葛藤をつづけている文化活動「オーケストラの生演奏による公演活動への模索」に注目してみたい。
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  この5月上旬、ウィーンフィルの楽団員が医師や技術者の協力を得て、演奏会場のステージでの各種楽器の演奏中の飛沫の拡散状況を検証する実験を行ったという(NHK WEB NEWS[7])。結果は、弦楽器で50cm、管楽器中最も拡散したフルートでも75cm(写真10)となり、通常の演奏スタイルでも感染リスクは抑えられる可能性を世界に向けて発信した[8]。その結果オーストリア政府もオーケストラの公演活動の規制を緩め、入場者数を制限した上での許可が出され、6月5日にあの伝統ある楽友協会ホール「黄金の間」で指揮ダニエル・バレンボイムのMozartやBeethovenの曲が演奏されたという。通常の生演奏による公演再開への第一歩が踏み出されたのである。

 わが国でもオーケストラ演奏再開への活動がなされている。6月9日、日本フィルハーモニーの楽団員21名の弦楽奏者が「ソーシャルディスタンス・アンサンブル」サントリーホールの協力を得て挑戦したという。2m間隔に並べられた椅子、その物理的な距離を補うために、演奏者は「いつも以上に耳を澄ませ手空気を感じとって、さらに目で見てということをすることでコミュニケーションが取れるのではないか」との感触を得たという。
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 また、6月11日、12日にわたり、東京都交響楽団では東京文化会館大ホールで実験的な試演を行っている(ぶらあぼ[9] , ONTOMO[10], NHK[11])(写真11)。大学の微粒子工学や感染症の協力を得て、大野和士の監督・指揮で、金管合奏、木管合奏、管弦楽曲、オペラアリアなどの曲が、
 演奏者間の距離を2mから1.5m、さらに1mまで狭めたり
指揮台前のアクリル板の有無
など操作して、感染リスクと音楽性の調整可能性が、飛沫感染を測定しながら検証されたという。
その結果[12]、
 観察された飛沫は管楽器でさえもごくわずかで日常会話よりリスクが高いわけではない、
 2mの距離では、近くの人の息遣いを感じ、遠くの人とアイコンタクトをとるのが難しく、一体感のある演奏は望めない

ことが分かりわかり、
 1mの対人距離で納得できることが確認された
という。

上述のオーケストラの生演奏時の感染リスク検証実験を見ても、本当に2mの間隔が必要か、飛沫対応とその場面の対人距離感のバランスの観点、そして前節までの知見とあわせると、一般的な社会的コミュニケーション場面では社会距離近接相1.2mの確保に努め、特に仲間としての共働場面では個体距離の遠方相も感染リスクに特に留意しながら使い分けるというのが現実的ではなかろうか。


(3)密な整列型座席の効率的空間活用のために配置を工夫する
 病院の待合室や交通機関の指定座席のような整列型座席の空間配置については、従来の座席をそのまま利用しようとすると、3蜜回避のために、前後左右の間隔を適切に空けて着席可能とするというのが一般的であるが、空間の利用効率が大幅に落ち込んでしまう。
 そんな状況打開へのヒントとなる事例を紹介しておこう。航空機のシートデザイン[13]について、写真12のような提案がアビオンインテリアズによってなされている。
前向きと後ろ向きの座席の交互配置と透明の飛沫防止ガードの組み合せることで個体距離で疑似社会距離を実現して親密なコミュニケーションも可能な工夫がなされ、中間座席の閉鎖などを行わずに効率的空間利用が図られているのである。
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「withコロナ」を個々人の意識や社会制度の変革で乗り越えてゆくことが基本となるが、人間本来の「個体距離」や「社会距離」を実感できて、かつ「感染リスク」を回避できるような技術的・デザイン的方策を開発し、科学的・客観的な検証で確かな深化をもたらす方策を見出してゆくことに、もっとしっかりと取り組んでゆくことが我々の叡智なのではないだろうか。


《参考資料》

[1] ウィキペディア「社会距離拡大戦略」

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E8%B7%9D%E9%9B%A2%E6%8B%A1%E5%A4%A7%E6%88%A6%E7%95%A5

[2] E.T.Hall : THE HIDDEN DIMENSION, Doubleday & Company, 1966(日高、佐藤訳:かくれた次元、みすず書房、1970

[3] J.J.Fruin: PEDESTRIAN Planning and design,1974(長島正充訳:歩行者の空間=理論とデザイン,

鹿島出版会,1974)

[4] 日本建築学会編:単位空間 建築資料集成3、丸善㈱、1980.

[5] 本間道子:過密への挑戦 プロクセミックスとはなにか、講談社、1981.

[6]久保幸恵:避難所における心的負担軽減のための環境構築に向けて、修士論文、長岡技術科学大学、2004. [指導:中出文平、中村和男]

[7]https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200623/k10012480391000.htmlNHK WEB NEWS:特集「withコロナ」の公演活動とは ~オーケストラ再開への模索~、2020623日.

[8]https://www.swr.de/swr2/musik-klassik/blaeser-auf-corona-untersucht-100.html: Corona-Forschung Auch WienerPhilharmoniker untersuchen Infektionsrisiko bei Bläser*innen

[9]https://ebravo.jp/archives/65937:ぶらあぼ 東京都交響楽団が「公演再開に備えた試演」を開催2020.06.12

[10]https://ontomo-mag.com/article/report/tmso-experiment/ONTOMO 専門家とエアロゾル測定~大野和士&東京都交響楽団「日本モデルを提供したい、2020.08.18

[11]https://www.nhk.or.jp/ohayou/digest/2020/06/0626.htmlNHK けさのクローズアップ、ウィズコロナ時代 コンサート再開への挑戦、2020.06.26

[12] COVID 19 影響下における演奏会再開に備えた試演」概要、東京都交響楽団、2020/06/25

[13]https://www.businessinsider.jp/post-212258航空機の座席数を減らさずに社会距離を確保するには後ろ向きシートや仕切り板を提案、BISINESS INSIDER,2020/05/11

                                                       (2020/08/02記)

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# by humlet_kn | 2020-08-02 16:14 | 解かる | Comments(0)

[No.125]人間生活と文化(15) 対人距離とwithコロナ(1)

わが国の新型コロナウイルス感染症の拡大/減少の第1波は山を越え、収まる様相を見せたことから、5/25には緊急事態宣言が解除された。それから2ヶ月近く、経済活動や暮らしにおける行動自粛が軸足を経済の回復に徐々に移し、この6/19には「都道府県をまたいだ移動の自粛」が全面的解禁となり、この7/22にはGO TOキャンペーンがスタートしたところであるが、確実に感染拡大の第2波に呑み込まれつつある。

一方で、新型コロナウイルス感染症の疫学的な抑止は、PCR検査や抗体検査の着実な定着化が進みつつあるものの、有効な治療薬やワクチン開発が途上にあり、国際的な開発競争が激化する中で、その成功時期や普及可能性も未だ見通せない状況にある。この新型コロナウイルス感染の第2波、第3波の発生可能性を前提とした、「withコロナ」のビジネスや暮らしの在り様を追求して行くことが必須の状況となっている。そこでのこの感染症の特質に対して求められる行動変容の基本の一つが「人と人の間の距離の確保あるいは密な接近や密着の回避」とされてきた。

この「人と人の間の距離の確保」に対しては、感染症の拡散抑制のためのシンボリックな行動戦略として、WHO(世界保健機構)2009年の豚インフルエンザの流行時に「他の人から少なくとも腕1つ分の距離を保ち、人が集まることを最小限に抑えること」として提唱したとされる[1]。さらに、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが未だに拡大し続けている中で、CDC(米国疾病管理予防センター)は「社会的距離の確保」(socialdistancingという語を[No.125]人間生活と文化(15) 対人距離とwithコロナ(1)_b0250968_17380135.jpg “keeping space between yourself and other peopleoutside of your home”の意味で用い、一般的に多用されるようになってきた。実践的には
 To practice social or physical distancing stay at least 6 feet (about 2 arms’ length) from other people.
と述べている。(1
 WHOは社会学的な人のつながり方の距離感をイメージさせるsocial distancingという用語よりもphysical distancing(身体的距離の確保)の使用を勧めるとともに、具体的な対人距離確保指針として、
 “Maintain at least 1 metre (3 feet) distance between yourself and others. Why? When someone coughs, sneezes, or speaks they spray small liquid droplets from their nose or mouth which may contain virus. If you are too close, you can breathe in the droplets, including the COVID-19 virus if the person has the disease.
を掲げている。

 筆者自身、この「対人距離」については空間における集合行動の研究を進めてきた中で、しばしば取り上げてきたところであり、特に「社会的距離」は、今回の新型コロナウイルス感染抑制の文脈での使われ方とは異なっていたので、本稿では、まずはそのことを紹介し、両者を重ね合わせながら、「withコロナ対応での(身体的距離というよりも)社会的距離の在り様」をあらためて考えてみたい


1.空間における集合行動にみられる人間の相互間隔について

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 文化人類学の名著として知られる

  EdwardT. Hallによる “THE HIDDEN DIMENSION” [2] (写真1)

に出合ったのは、私が群集流動の研究を始めた1972年のことである。当時は、集団行動と生活環境の適合性に焦点を当てた新たな人間工学分野を切り拓くことを目指し、過密な通勤環境を緩和するだけでなく混雑を適正に保ち、安全、快適な施設・都市空間を実現するためのシステム科学によるアプローチを開始した時期であった。そのときに目に留まったのは

 JohnJ. Fruinによる“PEDESTRIAN Planning and Design” [3]

であり、その中の歩行と人間工学の章の「個人的空間緩衝空間」の節で、「E.T.ホールによる人間の感覚特性に基づいて定義された4種の人間間隔距離」に言及していたのである。

(1)対人コミュニケーションにおける人間の相互間隔

 まずは、ホールによる「人間における距離」の4種の距離帯を概観しておこう。焦点個体から他個体への近さに応じて「密接距離/個体距離/社会距離/公衆距離」の距離帯があり、それぞれの距離帯には「近接層/遠方層」が設けられた。ホールは、その独自の視点からの空間に関する人類学として「人間が(コミュニケーションにおいて)空間をどのように使用するかについての相互に関連する観察と理論」を体系化しプロクセミクスと呼んだ。その中核をなすのが「人間における距離」である。著書では、その導入にあたって動物における距離の調節と混みあいと社会行動に言及した上で人間における空間知覚について、遠距離受容器としての目・耳・鼻、近接受容器としての皮膚と筋肉の特質、そしてそれらの総合としての視覚的空間特質から人間の生理的基盤としての感覚の構造を整理している。その上に文化的レベルの空間に関する知見を組み入れ人類学としての「人間における距離」の組織化モデルを展開しているのである。

では4つの距離帯について見ておこう。


(D1) 密接距離=他者の存在が、すべての感覚の高い入力が結合して、他者の身体と密接に関係していると実感できる

  (D1-a) 密接距離 近接相:筋肉と皮膚がコミュニケーションを行う。愛撫、各党、慰め、保護の距離。身体的接触もしくは身体的インヴォホルブメントの可能性の大きいことが、双方の意識の最上層にある

  (D1-b) 密接距離 遠方相(618インチ/1545cm):頭、腿、腰等が簡単に触れ合うことはないは、手で相手の手に触れたり握ったりできる。頭部は拡大されて見え、表情はゆがめられる。外国人がこの距離の範囲に無作法に入ってくるとアメリカ人は生理的な不快感を感じる。
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(D2) 個体距離=これは小さな防御領域、つまり生物が自分と他者の間に保つ泡と考えてよい。
  (D2-a) 個体距離近接相(1.52.5フィート/4575cm):筋感覚で近い、すなわち当事者が自分の手足で他者に何かをしかけることができるということ。そして目で相手の表情をしっかりととらえられ、互いに抱きあう感情が分かる。

  (D2-b) 個体距離遠方相(2.54フィート/75120cm):人を「腕の長さ」のところに居させるということに対応。片方が手を伸ばせばすぐにさわれる距離から、両者が腕を伸ばせば指を触れ合う距離までの範囲。真の意味での身体的支配の限界。15度の明瞭な視界には顔の上または下半分が含まれ、周辺視界には手と座位の身体全部が含まれる。(写真2:個体距離1.2mFruin[3]より)


(D3) 社会距離個体距離と社会距離の境界は、「支配の限界」を示す顔の細かいディテールは見てとることはできず、特別な努力なしに相手に触れたり触れようとしたりできない。アメリカ人の場合声は正常の水準にある。[No.125]人間生活と文化(15) 対人距離とwithコロナ(1)_b0250968_05384295.jpg


 (D3-a) 社会距離近接相(47フィート/120210cm):頭の大きさは正常に近くされ、その人の姿が目の中心窩領域に多く現れる。7フィート離れると、明確な焦点の範囲に鼻および両眼の一部にまで広がる。個人的でない用務はこの距離で行われる。一緒に働く人々は近い方の社会距離を用いる傾向がある。(写真3:社会距離-近接相1.22.1m Fruin[3]より)

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 (D3-b) 社会距離遠方相(712フィート/210360cm):「わたしに見えるようにちょっと離れてごらん」といわれて取る距離。この遠方相で行われる業務や社交上の対話は形式ばった性格をもっている。相手の両目と口は最も明晰な視覚の範囲に入る。この遠方相のプロクセミクス的特徴は、人を互いに隔離し遮蔽することである。この距離だと簡単に触れ合い、好きなときにべつべつになれるのである。(写真4:社会距離-遠方相1.2mFruin[3]より)


(D4) 公衆距離=個体および社会距離から公衆距離に移るといくつかの重要な感覚的変化がおこる。この距離はインヴォルブメントの範囲の十分外側にある。誰もが公的な機会に利用する距離

  (D4-a) 公衆距離近接相(1225フィート/360750cm):敏捷な者は脅かされたとき逃げるか防ぎことができる。声は大きいが、最大の音量ではない。12フィートでは、15度の菱形のはっきり見える班員2人の顔が入り、60度でざっと見る範囲には、体全体がすこしゆとりをもって入る。他者がいれば、周辺視野でとらえられる。

  (D4-b) 公衆距離遠方相(25フィート以上/750cm以上):公的な重要人物のまわりには自動的に30フィートの隔てが置かれる。30フィート以上になると普通の声で話される意味のこまかいニューアンスや、顔のこまかい表情や動きも感じとれなくなる。声その他あらゆるものを誇張、増幅する必要がある。非言語コミュニケーションの大部分が身振りや姿勢に移ってゆく。


 以上のプロクセミクスの知覚における遠近の距離と各受容器の相互作用をホールは表の形に整理している。(表1

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(2)歩行群集における人と人の相互間隔

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群集歩行の研究を始めた1970年代の焦点課題は安全に効率よく群集を統御することであったが、当時、ようやく暮らしの質の向上に目を向けられるようになり、歩行者天国が交通事故対応での安全策としても注目され始めた。そこで、筆者らも買い物群集における快適な歩行空間の作りの要件を見出すことにも取り組んだのを覚えている。歩行者天国が銀座にも導入され、車を意識させない交通空間が実現し、自由に買い物を楽しみ乍らもゆったりとしたにぎわいを享受したのである。(写真5:近年の銀座の歩行者天国)(写真6:渋谷スクランブル交差点)[No.125]人間生活と文化(15) 対人距離とwithコロナ(1)_b0250968_09282076.jpg






 そうした群集歩行への人間工学の観点からのアプローチの基盤は、密度と歩行速度の関係を、歩行空間の形状や階段/平坦といった条件、そして歩行群集の移動目的との対応でとらえることであったが、歩行者天国のような場面では、歩行者が過密になることなく、2次元の平坦な広々とした空間で各人の好ましい速さで自由に歩けることが重要である。

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対人間隔の観察によれば人体楕円2[4]を想定することができる。そこでは接触領域、非接触領域、快適領域が導入されたが、ホールの研究にある対人距離の諸相を踏まえれば、接触領域が身体的密着を伴う密接距離の近接相、非接触領域が親密な関係にある者同士が侵入してくることを許容できる密接距離の遠方相、そして快適領域と通り抜け領域は、その内部では相互が直接的に身体的影響を及ぼし合うことが可能な個体距離の近接相に対応すると考えられる。すなわち快適領域と通り抜け領域は一時的に特定の他者が相互に物理的に影響を及ぼし合える領域とみられるのである。
 そして動きとしての面識のある他者との近接を伴う場合には、どの方向から他者が近づいてくるかで不愉快と感じる心理的領域を調整するのである。(図2右:近接距離) [4]

◆歩行者の相互間隔のパターン
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 さらに筆者らが詳細に観察、分析した群集歩行の様態としての「歩行者(非通勤群集)の相互間隔のパターン」 [4]を見てみよう。図3は東京の繁華街の非通勤群集の横断歩道での対向流動の観察・分析によるものである。そこでは一方向流状態と勢力互角の対向流状態の場合の、比較的混雑のない場合の密度レベルに応じて、注目の歩行者の前方から側方までの各方位での他者と確保されている間隔が表されている。特徴は、一方向流ではいわば「見方同士の他者との確保間隔」であり、自由な歩行に近い密度0.4人/㎡では前方に1.7m、側方に1.2mの空間を確保しているが、対向流では「見方同士と敵対者との確保間隔」では見方同士で一方向流と大差ないのに、密度の高まりに伴い前方間隔は縮めるが、側方間隔は1.2m程度を維持しようとしている。そして敵対者との間では前方・側方とも2m程度の空間を確保し、密度の高まりに伴い側方間隔は縮めるが、前方間隔は2m程度を維持しようとしていることが読み取れる。これらから見知らぬ他者との公共空間での自由歩行時の確保間隔は前方1.7m、側方1.2mとみておくのが自然であろう。この間隔は歩行動作の手足の自由度確保と歩行運動を維持しつつ前方者が突然停止しても余裕をもって停止できる間隔を反映しているのであろう。

◆移動(意図)をともなわない待ち行動時における対人間隔
 典型的には、(1)何らかのサービスを受けるために順番待ちで行列を作って並ぶ場合と、(2)室内外のホールや広場で待ち合わせや待機のために単独またはグループを作っての待ちの場合がある。(1)ではアッシュアワー時の混雑するホームでの乗客の電車待ち行列やスーパーでのレジ待ちがこれに当たる。また(2)では駅構内のコンコースや劇場[No.125]人間生活と文化(15) 対人距離とwithコロナ(1)_b0250968_08520569.jpg

のホワイエでの観劇前や休憩時の休息、歓談場面などである。そして(1)(2)の中間として繁華街の交差点の横断信号待ちやエレベータ利用の待ちの群集が思いつく。 筆者のこれまでの研究では、(1)に関してJR巣鴨駅の複数の自動券売機の購買客の列を、(2)に関してはJR上野駅の構内コンコースでのグループでの待合せ状況を、そして(1)(2)の中間としての東京数寄屋橋スクランブル交差点の信号待ち群集を観察・分析したことがあった。
(1)のタイプの順番待ちの行列に注目する場合には、行列の人数とサービスを受けられるまでの時間を中心に分析を行ったが、対人間隔の観点では、行列の単位長さ当たりの人数(線密度 [人/m])あるいはその逆数の一人当たりの平均行列長(平均の前後間隔と同等[cm/人])でとらえると、50~55 cm/人とされた。図4(待ち行列のパターン、東大高橋研)は建築資料集成掲載[4]の現金自動払出し機の待ち行列図の例であり、Fruin[2]によるとバス待ちの通勤客の行列でも切符売り場の待ち行列でも、人の間隔は48~50cmであって、ホールの言う個体距離の近接相が確保されると考えられる。
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 (2)のタイプの待ち合わせや待機行動における対人間隔については、一般的には小集団が2次元空間内で相互に間隔をあけて思い思いの位置を占め合うことから、小集団内の成員間の相互間隔と小集団間の相互間隔の様相が注目された。前者については平面図的な配置パターとしては円型、半円型、同一方向型に大別できるが、小集団内部の隣接成員との間隔は個体距離の近接相であることが多い(図5)。
 それに対し後者、すなわち小集団間の距離は、JR上野駅コンコースの観測(本間道子 [5])によれば、空間全体の平均密度が0.14人/㎡とやや混雑した状況でも、グループサイズが1人から5人へと大きくなるにつれてグループ間距離は150cmから300cmへと直線的に増大することが見られたという(図6)。グループサイズ1名の場合の150cmに着目すると社会距離の近接相に当たり、小集団間の社会距離に当たる様相がとらえられていたと見ることもできよう。
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(2020/08/02 記)
================= No.126へつづく ==================


# by humlet_kn | 2020-08-02 09:32 | 解かる | Comments(0)

[No.124]くらしの中で数学を(7)―<速報私記>“新型コロナウイルス感染過程”をひもとく(その3):大型連休の自粛成果は

 本ブログではNo.122,123の(その1、その2)で新型コロナウイルス感染の拡大過程に焦点を当て、最も概括的な数理モデルである“SIRモデルの枠組みでわが国全体の2月下旬から5月初旬までの実績データにより[未感染者][現存陽性者][除去者(回復者/死亡者)]の人数を、日々の変遷としてとらえ、その新規感染率、回復率、死亡率の日々の変動も定量的に分析してきたところである。

 そして、それらの変動にかかわる感染発生に関わるイベントの生起や、政府の対策、そしてわが国国民のビジネスや暮らしにおける行動自粛の状況などの影響について考察を加え、5月の大型連休以後の、想定した政府の対策や国民の行動自粛、治療の進化などのシナリオ下での感染拡大/終息過程の予測を試みたところである。

大型連休も明けて、実際の政府の緊急事態宣言による各種施策、国民の行動自粛の実態が明らかになるとともに、感染過程の実績データも発表されてきたことから、本「速報」では5月末までの実績データを踏まえた分析を進め、特に大型連休の行動自粛がどれほどの成果をもたらしてきたか、さらに、あらたなシナリオを構成することで、より現実的な今後の新型コロナウイルス感染過程の終息の見通についてあらためて呈示してみたい

 なお、ここでは速報性を重視し、詳しい解釈、解説などは行っていないことをお許しいただきたい。

まず、以下に前のマイ・ブログ記事(No.122,123)にも記載した「感染症を巡る社会動向の経緯」について47日の緊急事態宣言発令以降の事項を一部ダブらせながら記載しておこう。

47 政府「緊急事態宣言」発令(接触80%削減要請;4/8午前0.より1ヶ月程度

416 政府「緊急事態宣言」拡大:全国へ(2020/04/17午前0.より5/6まで)

54 政府「緊急事態宣言(全国)」延長(2020/05/31まで)

514 政府「前倒し39県で緊急事態宣言解除」

521 政府「東京、神奈川、千葉、埼玉県および北海道を除く全国で緊急事態宣言解除」

525 政府「全国の緊急事態宣言解除」

  530,31日 緊急事態宣言解除後初の週末 都内の繁華街にマスク姿の人出が戻り始め、湘南海岸の車の渋滞が発生し、間隔を開けての砂浜を楽しむ家族連れも

 ◆湘南海岸沿いの「134号線の稲村ガ崎付近」の車の列(従来と自粛時)






     








(1)感染状況に関する厚労省発表データにより実感染経過の分析


   

   1 5/29までの公開データの感染拡大・終息過程の推移(感染者の現存数と日々増減数)


  図1によれば、5月末には現存陽性者数が2千名を下回り急速に終息に向かいつつあるように見える。


   

   2 5/29までの公開データの感染拡大・終息過程での日々の増減者数の推移


 図2によれば、5月の連休明けからは日々の退院者数が新規感染者数を大幅に上回っている。


  

3 5/29までの公開データの感染拡大・終息過程での現存者数当りの日々の増減者率の推移


 図3によれば、5月末に入って新規感染率に上昇気配が見えることが気がかりなところである。


  

図4 5/29までの公開データの感染拡大・終息過程での累積の感染者数・回復者数・死亡者数


529における、累積の感染者数に対する累積退院者の率は76 累積死亡者の率は5.3となっている


(2)感染者動向に関する今後の推測


厚労省発表データから各時点での現存感染者1人当り・1日当たりの感染率、回復率、死亡率を検討・設し、数理生態学的SRIモデルに適用し、シミュレーションしてみた時系列としての実績・将来推計の推移を見てみる。

4/7の緊急事態宣言が遵守され4/25以降その効果が現れ試験投薬も5/6から始めた場合の推測>

 政府として、これまでの穏やかな自粛要請を転換し、4/7に緊急宣言を発令し、4/11から国民すべての他者との接触行動を80%減らすことができ、4/25以降に効果が顕在化し、一定効果を示す治療薬の試験投与も5/6から開始された場合のシナリオで、今後の感染拡大/終息過程の推測してみたものである。

  

5 感染過程のシミュレーション結果:4/11以降緊急宣言遵守(80%接触行動削減)、4/25以降その効果が顕在化し、治療薬の投与も5/6から始まると設定(5/28までの経過は図1の実推移と比較可能)

  

6 感染過程のシミュレーション結果: 5/31までの経過における日々の新規感染者数、回復者数、死亡者数の推移(5/28までの過程は、図2の実推移と比較可能)

  

7 感染過程のシミュレーション結果:4/11以降緊急宣言遵守(80%接触行動削減)、4/25以降その効果が顕在化し、治療薬の試験投与も5/6から始まると仮定(5月上旬現存陽性者は急減、盛夏を迎える前には終息へ)


今後、抗体検査、唾液によるPCR検査の導入、新たな治療薬の採用・承認、そしてワクチン開発の確立が進むことで、第2波、第3波の感染の波を極力抑え込み、人間と新型コロナウイルスとの共存する姿を描くことが必然となろう。しかし、わが国でのこの第1波の「行動自粛」にもとづく、感染大流行の抑制経験をどのように活かしていけるか、様々な観点からの総合的分析が求められるところである。

以上

2020/06/02 記>

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# by humlet_kn | 2020-06-02 10:51 | 解かる | Comments(0)