2.2 稲村の家の全体的な消費電力の見積もり
前節の各用途毎のエネルギー消費実態の見積もりを合計すると、「稲村の家」の各季節における電力消費量合計の実態は
月間消費電力量:
春秋期1F 251 [kWh/月]、 2F 364 [kWh/月]、 1,2F合計 615 [kWh/月]、
夏 期1F 342 [kWh/月]、 2F 501 [kWh/月]、 1,2F合計 843 [kWh/月]、
冬 期1F 440 [kWh/月]、 2F 645 [kWh/月]、 1,2F合計 1085 [kWh/月]、と推定された。そのエネルギー消費用途別の内訳を記すと表1のようになっている。これらのデータをグラフ化すると、図3が得られた。
表1 季節毎の月間消費電力量推定(用途別)[稲村の家]
さらに、この季節毎の月間消費電力量推定値(用途別)をもとに年間の消費電力量推定値(用途別)を概算してみた。表2、図4、5にその結果を示した。
その特徴を見ると、
・年間の消費電力量は9600[kWh/年](MJ換算で34500)[MJ/年])
・季節間の比較では、春秋期は一年を通して電力消費が最も少なく、夏期では37%増、冬期には75%増となっている。この季節差の主たる要因は温熱環境のエネルギー負荷への冷暖房機器の電力消費であり、次いで給湯における温水の加温・保持のための電力消費も関わる。
・年間の合計電力消費の用途間の比較では、給湯が48%、冷暖房が23%、炊事が14%となっており、この3用途で85%となる。従来の家庭用電力需要の傾向として照明がかなりの割合を占めてきたが、LEDや電球型蛍光灯の導入効果が表れていて4%に留まっている。また意外だったのはトイレの電気便座の消費電力が4%と見積もられた点である。
これらの推定結果について、資源エネルギー庁が行った「平成23年度エネルギー消費状況調査(民生部門消費実態調査)」[8]を参照すると
・年間の世帯当たりのエネルギー消費量の合計は
150㎡以上の戸建住宅: 54,907 [MJ/世帯・年]
関東地方の戸建住宅: 42,126 [MJ/世帯・年]
4人世帯の戸建住宅: 49,217 [MJ/世帯・年]
オール電化の戸建住宅: 43,473 [MJ/世帯・年]
・年間の世帯当たりのエネルギー消費量の用途別割合は、概ね
150㎡以上の戸建・集合住宅: 給湯38%、冷暖房27%、厨房4%、照明 4%
関東地方の戸建・集合住宅: 給湯43%、冷暖房20%、厨房5%、照明 5%
4人世帯の戸建住宅: 給湯41%、冷暖房24%、厨房5%、照明 3%
オール電化の戸建住宅: 給湯35%、冷暖房24%、厨房5%、照明 4%
となっており、稲村の家のエネルギー消費量推定値は
・年間の世帯当たりの合計で、一般の関東の広めの戸建住宅(49,000 [MJ/世帯・年]程度)に比して73%程度、オール電化の戸建住宅に比しても80%程度と、かなり抑制されている。
・用途別割合では、給湯が5~10%、炊事が10%程度多めである。その主たる原因は、「稲村の家」は暮らしに関してほぼ独立した2世帯住宅になっていることと思われる。
・用途別の消費電力量の値では、4人世帯戸建住宅と比べると、冷暖房で65%、給湯で80%、炊事で190%、照明で70%と、「高気密・高断熱、ソーラーサーキットの住宅」「エコキュート」および照明の「LED・電球型蛍光灯」の導入効果と思われる。
3.稲村の家の消費電力量の実測データを確かめる
上記のこれらの稲村の家の消費電力量の推定値について、実際の消費電力量(電力会社の測定データ)の実績値と比較してみよう。表3、図6は、稲村の家の毎月(2012/8~2013/7)の月間消費電力量の実績値を示している。
また、電力会社の使用電力量は、昼間、朝晩、夜間別にデータが集計されているので、それらの内訳が分かるようにグラフ化したのが、図7である。そこでは電力契約が1,2Fで別々に行っていることから、分けて示した。
これらの実績値を前述の消費電力量の推定値と比べてみよう。まず、季節毎の月間使用電力量であるが、実績値は
春秋期 568 [kWh/月]、 夏期 883 [kWh/月]、 冬期 1131 [kWh/月]
であり、推定値
春秋期615 [kWh/月]、 夏期 843 [kWh/月]、 冬期 1085 [kWh/月]
と類似している。実績値は、春秋期にやや下回り、夏冬期にやや上回っている。特に2013年の7月は例年より猛暑となっており前年の8月の実績は推定値に近い。
つぎに実績値の時間帯別の季節変化と推定値の用途別の季節変化とを比べてみると、夜間電力量の実績値は、
春秋期 241 [kWh/月]、 夏期 319 [kWh/月]、 冬期 443 [kWh/月]
であり、給湯のための消費電力量の推定値
春秋期379 [kWh/月]、 夏期 350 [kWh/月]、 冬期 407 [kWh/月]
を比較すると、夏期、冬期は類似しているが、春秋期をかなり下回っている。実際の給湯状況を振り返ると入浴回数が減っている可能性もある。
朝晩の電力量の実績値は、
春秋期245 [kWh/月]、 夏期 358 [kWh/月]、 冬期 547 [kWh/月]
主として冷暖房、照明、炊事、洗濯・掃除の大半の電力を使っていると考えると、推定値は
春秋期155 [kWh/月]、 夏期 348 [kWh/月]、 冬期 501 [kWh/月]
となり、春秋期を除いて夏期、冬期とも類似している。
<No.44につづく>
# by humlet_kn | 2013-11-14 21:57 | 解かる | Comments(0)