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[No.109] 人間生活と技術(5) 電気自動車(EV)に魅せられて(その2)

― その2 ―
◆地球をまもる住まいにおけるEVの役割への期待は・・・◆
 筆者はライフワークとして、暮らしに関わる技術のあり方として、地球をまもり、人間をまもり、豊かなくらしを志向するための「人間生活システム工学」を掲げてきた。ではEVはその領域においてどのような位置づけができるであろうか?
 私たちのくらしの基盤は、住まいにある。住まいは、その住人のくらしを展開する場としての戸建/集合形態の建物と機能させるための住宅設備・機器から構成されており、そこに家具類や家電機器を配置して、安全・健康/快適/便利なくらしを支えることになる。そしてそれらを維持し、機能させるためには、エネルギーや水の供給/排出が適切になされなければならず、さらに関連した情報の取得や処理そして発信が重要になるのである。
 マイカーは、これまでは住まいとは切り離され、独立にくらしに関わる道具として扱われてきたように思われる。したがってマイカーに求められる機能や性能を実現するための技術や産業活動も独立に成り立ってきたのであった。
 しかしEVの出現は、住まいとの共通基盤として、電力というキーワードを意識させ、少なくとも住まいからEVへの大量の日常的な電力供給を要請するとともに、大容量のEVのバッテリーに蓄えられている電力を、住まい側に提供できるという可能性(V2Hと略称)が示されたのである。ではV2Hが住まい側から見たときに意味を持つのはどのような場合なのか、おおきくは2つの事態が指摘されている。
 (a) まず分かりやすいのは、近年の異常気象の多発や大規模地震などの発生にともなって、地域や地方での大規模な停電が起こり、復旧までに数日間を要する可能性が高まっている中で、EVに蓄えられている電力を、住まいに供給し、基本的なくらしの活動を支えることが期待されるのである。実際、EVが満充電状態(例えばLEAFでは40kWh)であれば、標準的な家庭の電力消費を15kWhとしてみると、2日半は代替できることになる。実際、オール電化で3人家族の筆者の住まいでの近年の平均的な一日当たりの電力消費量は18kWhであったが、電力使用を節約すれば3日間程度の停電には対応できるであろう。

(b) つぎに住まいにおける多様なエネルギー源の組み合わせによる効率的な電力管理システムにEVを積極的に組み込む戦略についてである。
同システムの主要な電力リソースは、基盤として
①電力会社の商用電力
であり、これに付加される電力リソースは
②電気自動車LEAFのバッテリー(40kwh)
③太陽光発電(PV: Photovoltaics)
④住宅用蓄電池
である。EV取得を検討し始めたときの考え方は
 ①②を有効活用して、夜間に①からの安い深夜電力を②に蓄え、わが家の事情としての、車使用の限定的な日中や朝晩に②から住宅に電力供給する、という考えであった。これにより経済的にはメリットがあり、停電時への対応も可能であるが、①の電力では東電などでは発電時のCO2排出は現状と変わらないことになる。もちろん、電力をクリーン発電している商用電力から購入すればEV電気自動車に替えたことによるCO2排出分の低減は意味のあることではあるが…。
 (b-1) そこでより積極的にCO2排出の少ない電力を自前で創出する③のPVを導入することを検討してみたい。その場合に、④を併せて導入するかも課題となる。
 ③のPV導入については、7年前のわが家の新築時から関心を持っていたことであったが、設計段階で、土地の形状・向き、間取りなどへの要請から、屋根の形状・向き・勾配などについて南向きのPV設置面を殆ど確保できず、また、PV自体の性能向上の動向から、導入を見送っていた。しかし、この機会に思い切ってPV導入のフィージビリティについて検討してみることにしたのである。
 写真5の中央はわが家のGoogleマップ(上方が北)における上空からの屋根形状である。とりあえず家屋の南側の東西に向いた屋根2面にPVパネル(公称最大出力5.85kWh)(写真6)を設置することで住宅設備メーカーに見積もってもらったところ26枚のパネルが置けて、わが家の所在地(鎌倉市)における標準的な年間の日照データに基づく試算では、年間の発電可能量が5,565 kWh(月間発電量は夏期に600 kWh、冬期に300kWh)との結果(グラフ3)を得ているところである。ただし、実際の諸条件(気象、周辺の丘陵や建物の影など)の影響が加味されていないため、特に南に向いた谷間にあり朝夕には太陽が当たらないわが家の条件を考えると、7割程度に削減して年間3,900 kWh程度(月平均325 kWh)と考えておく必要がありそうである。因みに、わが家の実績値による電力単価平均値 23円/kWhを用いると、推定PV発電量の換算金額は年額で89,700円/年(月平均7,475円/月)となる。
仮に、PVシステム導入の初期経費を150万円(?)とすると回収に17年を要することになる。
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 (b-2) ではPV発電とEVを組み合わせることの意味を考えてみたい。
 PV発電の弱点の一つは、日照の有無、強度の変化によって時々刻々の発電量が大きく左右されることであり、本来、発電された電力は同時に消費されなければならないという特質がある。このことは東電や関電といった系統電力システムにおいても同様であり、社会的には時々刻々の電力需要の変動に合わせる形で、高度の発電量調節が行われている。最近も話題になった九電における太陽光発電の出力制御の導入も、こうした背景に基づいた措置になるのである。したがって、住宅用のPV発電においても、発電した再生可能エネルギーに自家消費に対する余裕が生じれば、系統電力で買い上げてくれるのがこれまでの考え方であったが、その買い上げの抑制制度も導入される方向にある。
 このことから、住宅に大容量の蓄電池をそなえて、日中のPV発電量の需給バランスによる余剰分を蓄えておき、朝夕や夜間の宅内電力消費に当てるということが、合理的な考え方といえる。では、住宅における再生可能エネルギーとしての余剰発電量があった場合に効果的に蓄電できる仕掛けはどのようにできるのであろうか。住宅関連のシステム技術の枠内では、住宅サイドとしては、PV発電と系統電力から電力供給を受け、当該の住宅における需給バランスによる余剰電力を住宅用の専用の蓄電池に蓄え、系統電力の時間帯による購入単価の違いなども勘案しつつ、PV発電能力を最大限に活かしながら経費を節約するように、住宅内の電力管理システムを構築することが志向されるようになってきている。
 ここで、あらためてEVの普及が急速に進むということを考えてみたい。住宅用の専用蓄電池の現状は、5~6kWhの容量で90万円程度、7~8kWhの容量で150万円程度とされる。蓄電容量も、100万円程の経費を要して導入しても、一日のPV発電量を10~15kWh/日としてみると30~60%の蓄電量であり、通常の住宅の電力使用量に照らすと、1日の使用量(例えば標準家庭での15kWh/日、まして筆者のオール電化の住まいでの実績使用量は18kWh)にも程遠いということになる。
 ではEVという大容量の蓄電池を積載する“道具”を“住宅設備”と見做すのはどうであろうか? 300~500万円という車両の購入価格の現実を見たとき、おおよそ同格のガソリンエンジン車からすれば100~150万円程度高価になっていると見られるが、その積載バッテリーの大容量(30~40kWh)で高性能の特性を考えると、このEVを“住宅設備”として組込み、住宅・EVの融合型の電力管理システムを構築することは大きな魅力となる。
[No.109] 人間生活と技術(5) 電気自動車(EV)に魅せられて(その2)_b0250968_141237.jpg ㈱ニチコンは、このような方向性のシステムの開発を日産LEAFの第1世代の発売以来進めてきており2012年に「EVパワーステーション」として市場投入している。そして、グローバルな自動車のEV化のうねりが高まる中、本年(2018年)6月には、「トライブリッド蓄電システム」 (トライブリッドパワコン、V2H スタンド、蓄電池ユニットの組合せ; 図3)が発売され、前述の①②③④を効率よく管理・調整して、経済性かつ停電時の対応性を実現できる住宅のトータルの電気エネルギー管理システムである。そして、秋には「EVパワーステーション」の進化版(a1) VCG-663CN3または(a2)VCG-666CN7が発表された(来年1月に発売予定)。こちらは、V2H に特化した設備で、既存のPV と系統電力の電力システムに、そちらをいじることなくEV とhome との電力受給を行うためのモノである。図4は「EVパワーステーション」(進化版)の説明資料からのシステム構成と機能場面の図解イメージの抜粋である。
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◆とりあえずマイカーとしてEVを体験して・・・◆
(a) 購入前の試乗体験

[No.109] 人間生活と技術(5) 電気自動車(EV)に魅せられて(その2)_b0250968_14482080.jpg 今年(2018年)の7月に入って、本格的にEVの購入を前提に、焦点とすべき車種についてのディーラーとの接触を始めた。具体的には、VWのe-Golfと日産のLEAFである。既に見てきたように、販売実績ではLEAFがe-Golfを引き離しており、逆に、筆者の感覚ではe-GolfがLEAFより格上であるようにとらえていた。カタログ上での比較としてはのように整理してみたが、実際の購入となるとやはり試乗による検討が重要になる。
 まず7月下旬に近くの日産営業所で同乗者としてのLEAFの初体験を行った。「加速パワー、静粛、ゴツゴツの乗り心地」というのが第一印象であったが、確かにこれまでのガソリン車にないモノを実感した。
そして番外ではあるが、8月中旬、新川崎にある㈱e-Gleで最先端の開発中のEV(Sim-Wil, 2012)に、NPO法人・子ども大学かまくらの小学生達(※)とともに同乗試乗をさせてもらうことができた(写真7,8,9)。㈱e-Gleは、前述のEliicaを開発した慶應義塾大学の清水浩先生によって電気自動車と再生可能エネルギーの研究開発を行うために5年前に立ち上げられたベンチャー企業である。その印象は、圧倒的な加速力と回生制動による減速効果の体感であった。
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 本題に戻して、マイカーのためのEVの試乗であるが、8月の時点での愛車 “VW Golf”( 2009年10月新車登録)は9年目の車検直前であり、買い替えの可否判断も必要であったが、その評価は前述のマイカー遍歴車種のイメージマップに記したように、4軸の視点からかなりの高評価であったので、買い替えるならまず第一にGolfの可能性を検討したいと考えていた。[No.109] 人間生活と技術(5) 電気自動車(EV)に魅せられて(その2)_b0250968_145049.jpgしかもEVとなると、e-Golfが対象となる。VWにとっては来年以降の本格的なEV化に向けたプロトタイプ的な車種とみられ、販売台数は限られていたと見られるが、その役割としてはGolfにもEVという存があることをマーケットに意識してもらうためか、 e-HAYAMACATION」というe-Golf試乗キャンペーンを、近くの葉山地域で行っていたことから応募したところ受理されたのである。8月末に、葉山マリーナ(写真9)に出向き、車を借りて6時間程乗り回すことができたのである。さすがに現行の第7代GolfをベースにEV化していることから、まずは、車体のサイズ、走行安定性、操作環境、乗り心地は第6代Golfのユーザーとしては著者には違和感がなく全体的に心地よさを感じた。しかしEVとしての動力系および制動系の体感はガソリンエンジンのそれとは一線を画していた。特に丘陵の下り勾配の走行時には充電量が目に見えて増加していくのは納得であったが、加速性などは比較的マイルドな感覚をもったのである。

[No.109] 人間生活と技術(5) 電気自動車(EV)に魅せられて(その2)_b0250968_1452585.jpg LEAFについても自身での運転感覚の体験が必要ということで、あらためて近くの日産営業所で近くの公道を30分近く運転させてもらい、9月に入ってこちらもキャンペーン中の1泊2日の借り出し試乗(写真10)を行うことができた。e-Golfとの比較を意識しての感想になるが、一般的な乗用車としての、車体のサイズや足回り、走行安定性、運転操作、乗り心地については、「背が高く、前方視野も高めの運転席からという感覚」「路面の細かな振動が伝わり、タイヤの転がり音の遮蔽が弱い」「高速走行時の路面への吸着感は不足」「ハンドリングが軽すぎて、操作感が低くやや頼りない」「シートの身体へのフィット感/ホールド感が少ないが、座りにくいというわけではない」といったところであろうか。
 こうした2車種の試乗体験を経て、9月上旬には所有のガソリン・エンジン車の第6代Golfを手放して、LEAFを購入することに決断したのであるが、その際の判断の大きな要因になったことについて若干の補足をしておきたい。
 すでに本記事で述べてきた「地球をまもる住まいにおけるEVの役割への期待」の中で、「住宅・EVの融合型の電力管理システム」を既有の著者のマイホームに組み込む方向での第一ステップとして、EVの購入を図りたいとのこだわりがあったのである。そうした方向での歩みを踏みだしていたのが日産であり、LEAFを対象にした“V2H”のシステムを㈱ニチコンと開発してきた実績があったのである。そして㈱ニチコンは自動車のEV化がグローバルに急速に進もうとする中で、新たに進化した“V2H”のシステムの市場投入を図りつつあったが、当面、e-Golfなど外国メーカーのEVとの接続性を考えていないことを表明していたのである。
 また、LEAF選定のもう一つの要因が、安全運転支援の知的システムである。著者自身の70歳越えで今後5,6年間の運転状況を想定した時、「高齢ドライバー」に優しい運転支援システムの端緒として、ペダル操作が容易なe-Pedal(アクセルとブレーキを一つのペダルで)、ProPILOT(車間距離や車線中央のキープ)、ProPILOTPark(縦列/並列/車庫入れ駐車の全自動アシスト)があり、画像と距離センサーを駆使して車両に近接する障害物をドライバーに知らせてくれたり、ブレーキングをしてくれたりするシステムなどが搭載されていることが、安全確保のための期待となったのである。

(b) LEAF購入後、2カ月間の使用体験
[No.109] 人間生活と技術(5) 電気自動車(EV)に魅せられて(その2)_b0250968_14583878.jpg 10月初めに、LEAFの新車の納入写真11)があり、早くも2カ月が経とうとしている。今後、利用を続けていくうちに、様々な体験やトラブルなどに遭遇する可能性があるが、この間の新車の利用体験における実績データや感想を2,3述べておこう。
 まず、客観的な走行距離、電力消費に関する定量的なデータである。2か月間の走行距離はほぼ1,000kmであり、日常的な買い物と近くの知人との交流のための往き来の他には、鎌倉から箱根までの平日の昼間の日帰りドライブ程度であった。
 現在までは、自宅での充電設備は持っていないので、全て最寄りの日産営業所の急速充電サービスを利用している。1回で30分間の充電時間まで利用できるが、車の蓄電状態の%表示では、45%~50%の充電が実際のところであり、30%位の蓄電レベルから充電すると75~80%のレベルまで回復する。実際の平均の電費は7~8 km/kWhというところであり、1回の急速充電で40kWhの容量を持つバッテリーの50%分の20kWhが1充電間隔での電力消費量となり、経常的には走行距離140~160km毎の急速充電(30分間の待機を要する)を行ってきていることになる。したがって月間500kmの走行距離では、3~4回の急速充電を実施してきた。なお、急速充電はリチウムイオン・バッテリーにとっては負担が大きく、また満充電にするにはより充電速度が遅くなるということなので、バッテリーの負担を抑えるためには、普通充電でじっくり時間をかけることが望ましいのであろう。
 ここで、箱根までの片道63kmのドライブを電費の観点から振り返ってみよう。鎌倉(K)→箱根湯本(Y)→仙石原(S)というトリップの往路と復路の走行距離と消費電力を列記すると
 <往路> (K) →[平坦46km/6.4kWh]→ (Y) →[登坂17km/6.8kWh]→ (S)
 <復路> (K) ←[平坦46km/6.4kWh]← (Y) ←[降坂17km/△2.0kWh]← (S)
となり、電費は
 <往路> (K) →[平坦139 Wh/km]→ (Y) →[登坂400 Wh/km] → (S)
 <復路> (K) ←[平坦139 Wh/km]← (Y) ←[降坂 △118 Wh/km]← (S)
で、箱根の登り坂は大渋滞で400 Wh/kmの電力消費であったが、降り坂は118 Wh/kmの電力生成であり、登坂で失ったエネルギーを、回生ブレーキによる発電のおかげで同じ坂を降坂する際に1/4程度取り戻していると見ることができよう
 では、LEAF購入後のこの2カ月間の運転・使用体験の定性的な印象について最後に述べておこう。
EVという特質に由来することとして
 ・始動時に暖機運転のようなことは意識しなくてよい
 ・加減速時のギアチェンジによる段階性はなく、全くスムーズな加減速を味わえる
 ・アクセルとブレーキの同時作動を回避させるe-Pedalにより、ワン・ペダルでの速度調節ができるのが、便利である。ただし、減速は回生ブレーキを活用することから、通常の運転での惰性走行に当たるモードが作れないことが何らかのデメリットをもたらすかもしれない。またe-Pedalによる急な坂道の降坂では、当初の回生ブレーキの作動を切って、途中から通常のブレーキシュウによる制動となるとみられ、ドライバーは違和感を覚えることがあろう。
 ・走行中も電力の消費の節約に努めることから、ヒートポンプの作動や前照灯の不必要な点灯の回避には気を使うになった。
などが思いつく事がらである。
 知的運転支援システムについては、
 ・壁面や他の車の近接度を3段階で検知
してくれるが、ドライバーの空間知覚を補ってくれることは助かっている。ただし、慣れるまではやや煩わしいと思うこともあった。特に狭小の公道を走行中に、側方を追い越してゆくバイクや前方からのすれ違い車両の検知が意外と多いことに気付かされている。
 ・後退ビューモニタは、高齢ドライバーの注意力、技能の低下を考えると、支援効果が大きいと思っている。ただし、このモニターだけを頼りに後退の速度コントロールとハンドリングを行うには、かなりの慣れが必要かと思われるので、現状は後退動作時の間歇的な確認に役立てている。
 ・ProPILOTは、これまで近くの交通量のあまり多くない片側二車線の高速道路走行時に数回、合計で小一時間ほど使ってみた。機能的には高齢ドライバーの運転負担を軽減する意味で、とても効果的ではないかと思っている。設定した巡行速度のキープと遅い速度の前方車への追従のバランスに違和感はない。ただし、巡航速度の初期設定や変更、解除の操作については慣れが必要であろう。また走行レーンの中央位置のキープもハンドルに軽く手を添えていることで機能し、レーン中央からの左右位置のずれの検知による修正も適度の動作でなされるように感じられる。ただし、ゆったりとしたカーブのシステムによるハンドリング時には、ドライバーの運転のステレオタイプとの関連もあるのか、ややぎこちない動きを感じることもあった。
 ・ProPILOTParkについては、知的情報処理の活用による運転支援システムとして、最も興味があったのが、この半自動駐車支援システム(APS)であった。並列後退駐車の場合では、まず駐車したい場所をドライバーが見つけてその近くで停車し、APSの判断した候補スペースを確認する。さらにそのスペースに対してどの向きに入れたいのか確認/設定する。するとAPSは一旦前方にハンドルを切りながら前進して停止する姿勢を提示してくれるので、それでよければAPSに動作開始・継続を支持し続ける。一旦停止して、APSはハンドルを逆に切りながら後退して、想定の駐車スペースに収まれば終了するのである。これだけのプロセスをシステムがドライバーのサポートを受けながらゆっくりと行ってゆくので、まず時間がかかる。そして一連の作動に必要な移動スペースが本当に利用できるか周辺環境の状態の判定は必ずしも十分でないことから、実際は障害物と干渉してしまうような動作をしようとすることもあるようである。そのようなAPSの特性をわきまえた上で、駐車場内の車の通行量が少なく、障害物や指定駐車場所を明確に区分してくれる境界線や縁石、車止めなどが画像ではっきりとらえられる場合に限定して使用するのであれば問題はなさそうである。

 以上、e-GolfとLEAFという2車種の試乗、そしてLEAF購入後の2カ月の使用体験を通して、EVの走行性能や運転操作のしやすさ、維持・管理の仕方などについて実感した事がらを報告してきた。
 最後に、その体験を踏まえた、前述の「マイカー遍歴車種の4軸空間でのイメージマップ」の上に、LEAFを位置づけてみたものを図5に示した。

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 数年後には、さらなる進化を遂げたEVが続々と登場してくること、そして、住宅とEVの電力面での協調的融合化が進んでいることを期待したい。

                              [2018/12/1記]
***************** <了> *****************

by humlet_kn | 2018-12-01 14:59 | 解かる | Comments(0)

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