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[No.108] 人間生活と技術(5) 電気自動車(EV)に魅せられて(その1)

― その1 ―
◆「カルロス・ゴーン会長の逮捕!」
 衝撃的な報道が飛び込んできた。
 今まさに、日産の電気自動車(EV)のLEAFについて、このブログで取り上げようとしていたところであったので、日産のEV戦略とゴーン氏の経営展開の関連についても、意識せざるを得ないであろう。
 LEAFの登場は2010年であるが、石油危機以降のエネルギー資源の節約、そして地球の温暖化の主要因の温室効果ガスを抑制する流れが1997年の京都議定書により国際的合意を得たころ、自動車産業では、[No.108] 人間生活と技術(5) 電気自動車(EV)に魅せられて(その1)_b0250968_11362050.jpg1995年にはトヨタのPriusのプロトタイプが発表され、1997~2003年に初代(写真1)、2003~2011年に2世代目の量産ハイブリッド車への展開がなされた。こうした流れの中で国内外の他メーカーもハイブリッド車を含め従来のガソリンエンジン車からの脱却を追求し始めた。そんな中、日産自動車は1990年代になると、かつての輝きを失い経営に苦しみ、1999年にフランスのルノー社との資本提携を結び、更生を図ることとなり、ルノー副社長のカルロス・ゴーン氏が日産の経営責任者として「日産リバイバルプラン」に取り組むこととなったのである。グローバル企業としての生産・経営態勢のリストラを進める中で、「技術の日産」をどのように再生するのか?トヨタのハイブリッド車の流れに乗り遅れる中、大局的、先見的に対抗できる車作りとして、打ちだされたのが電気自動車(EV)開発への展開ではなかったのか。
[No.108] 人間生活と技術(5) 電気自動車(EV)に魅せられて(その1)_b0250968_1138989.jpg わが国の電気自動車の芽は清水浩先生の先進的研究(世界最速のEliica(写真2)の開発は2004年)があり、鉄道車両において培われてきた電動機械技術、そして自動車車体作りの確固たる基盤を組み合せたとき、ゴーン氏には勝算への展望が描けたのではないか。事実、当時の彼自身のEVへの姿勢については「EVの走行距離を補うための小型発電機の搭載を巡っては『複数の役員が搭載すべきだと考えていたが、コスト増を嫌うゴーン前会長にそんたくして役員会では誰も言い出せなかった』(別の元幹部)」(毎日新聞web版2018/11/22配信)という。そして、2010年12月の量産車LEAF(初代 写真3[No.108] 人間生活と技術(5) 電気自動車(EV)に魅せられて(その1)_b0250968_11414860.jpgの市場投入(2011年の国内の年間登録台数は1万台を超えた程度)であり、世界的にもその時点では、米国のEV専業のテスラ社(一般生産車の発売は2008年)のみが事実上の競合相手であったのである。
 順調なEV投入の滑り出しに見えたが、新たな技術の実践では技術者の目論見通りには行かないことが常であり、EVにおいても、バッテリー容量や使用走行条件による走行電費の大きな違いなどによる走行可能距離の制約、充電所要時間の長さ、バッテリー性能の経年低下なども克服すべき技術的課題として顕在化したものと思われる。
 そして、グローバルには、2015年のCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)で採択された「パリ協定」を基軸とする、2020年以降の地球温暖化対策の国際的枠組みへの動きが明確化され、欧州での自動車における温暖化対策の「ディーゼル車から電気自動車による対応への転換」や中国の「NEV(新エネルギー車)規制」の2019年導入の動きは、一気に世界の自動車産業のEVシフトを加速することになったのである。
 ゴーン会長は、2016年のデトロイトモーターショーで以下のような経営者としての「(EVへの)覚悟」を述べていたという。
今後毎年EVなどの排気ガスを出さないゼロエミッション車に多くの自動車メーカーが参入するだろう。消費者の需要はそれほど強いとは言えないが、環境規制をクリアするのに他の選択肢があるとは思えない。・・・・・自動車産業は、消費者の需要だけでは語れない産業だ。環境規制や政府が目指している方向性に強く影響される。そして今、多くの政府がゼロエミッション車を求めている。地球温暖化防止パリ協定など、あらゆることがゼロエミッション車無しでは不可能な方向に向かっている。もちろん時間はかかる。消費者はまだEVは値段が高いと思っているし、充電インフラも十分ではないと思っているからだ。しかし、インフラが整い、EVの航続距離が伸びて、値段が下がれば明らかな移行が始まるだろう。賭けてもいい。簡単に移行が進むわけではないが、この流れを避ける方法は見当たらない。・・・・・バッテリーの性能が上がっても走行距離の不安は無くならないだろう。それがなくなるのは充電インフラが整って、それが目に見えた時だ。私はこれまでたくさんの車を買ったが、どれくらいの距離を走行できるかなど気にしたことは一度もない。なぜなら、ガソリンスタンドはそこらじゅうにあるからだ。」
(Found this テクノロジーサイエンス 2017-11-22 記事「カルロス・ゴーン氏が考える電気自動車が売れる理由」; URL= https://www.weblog-i-found-this.com/

[No.108] 人間生活と技術(5) 電気自動車(EV)に魅せられて(その1)_b0250968_11482878.jpg そして、LEAFは2017年10月に2世代目写真4)が発売され、バッテリー容量の拡大、デザインの一新がなされた。2018年3月には、累計販売数が32万台を突破するとともに、2018年度上半期の時点で、世界の電気自動車(EV,PHEV)の販売台数において、合計75万8375台の中で、車種別では、2位の中国のBAIC EC-Series(*)の3万9906台、3位のTesla Model 3の2万 6620台、4位のToyota Prius Prime/PHV の2万4767台を抑えて、4万1775台でトップを占めている。(グラフ1,2を参照
 (*)中国政府が2018年6月から補助金対象となる新エネルギー車(NEV)を航続距離100km以上から150km以上に引き上げたため、航続距離150km以下に該当する「BAIC ECシリーズ」は2018年6月に月間販売台数を大きく落とし、2018年1月から5月までは累計販売台数で日産リーフを上回って、世界トップであったにも拘わらず、補助金廃止の影響を受け世界第2位に転落した
(兵庫三菱自動車販売グループ「EV/PHV/PHEV 年間 販売台数ランキング;https://www.hyogo-mitsubishi.com/news/data20180816090000.html
ゴーン氏の日産の会長職解任が先日(2018/11/22)の臨時取締役会議で決まったと報道されたが、EV戦略はどう展開するのであろうか、みまもってゆきたい。
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◆EV取得を今なぜ・・・◆
 ここでは、筆者がEVであるNissan LEAFをこの2018年10月にマイカーとして取得するに至ったことについて触れてみたいと思う。
もともと若い頃から、自動車への関心が強く、大学進学での学部や学科の選択の際にも、将来は自動車に関わる仕事をしてみたいという思いもあり、工学部さらには機械工学系の学科に進んだのであった。思い返せば、学生時代にも「自動車工学」という月刊誌を購読したり、同期のクラスメイトと廃車寸前の軽自動車を共同で手に入れ、エンジン回りや足回りなどを分解して楽しんでいた。そして、下宿生活の身でありながら、学部時代に運転免許を取り、大学院に進学してからは、車のある生活をしてみたくなり、親に頼んで、ポンコツの中古車を手に入れたのであった。その際の車は、大衆へのモータリゼーションの先導役を担ったトヨタの名車?パブリカの第1世代の車であった(700cc、空冷水平対向2気筒、2ドア、4速MT)。車の必要最小限の機能が備わっていたが、一切の無駄を省いたコンパクトな車体設計で、運転していると体の一部のように感じたものであった。この車を通して、運転感覚・スキル、車のエンジン作動や動力伝達機構、制動装置、足回りの原理などを体験的に学ぶことができたと思っている。
 以来、実家の車を含めて50年余に亘るマイカー遍歴は、ルーチェ[Z1]、ファミリア・ロータリー・クーペ[Z2]、三菱ギャランΛ[M]、スバル・レオーネ(中古)[F]、サニー・クーペ(新古)[N]、初代Golf(中古)[V1]、10代目コロナSF[T2]、オペル・アストラ[O]、そして6代目Golf[V2]と紡いできたのである。この間、主たる国内のメーカー5社とドイツのメーカー2社の車を通して、それぞれのメーカーのクルマづくりの姿勢を肌で感じてきた。その主観的な定性的整理を試みると、
命をまもる、財布をまもる、しっかりした作り、人への優しさ
という軸を設けて、4次元空間に上記の遍歴車種を主観的に配置したのが図1である(初代パブリカ[T1]も含めた)。ここに、各軸には
 命をまもる=事故発生の予防、事故発生時の運転者・同乗者への危害の抑制性
 財布をまもる=取得時の経費、走行エネルギー投入経費、保守経費
 しっかりした作り=車体の剛性、走行の安定性、部品およびシステムの信頼性
 人への優しさ=疲れず、快適で、運転の負担が軽い
のような意味合いを込めている。
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 齢70歳を越えて自分自身で運転できる、というよりも運転が許されるのは幾つまでだろうかと自問した時、最後に乗っておきたい車として何を選ぶべきか、真剣に考え始めたのである。
 すでに日産のゴーン会長とEVに関する前項の記述の中でも強調したが、地球温暖化への自動車産業へのグローバルな要請として、EV化に向けた流れは動かしがたい状況にあり、その利用電力の発電段階での化石燃料投入の抑制と再生可能エネルギー活用の促進を同時に推進することが求められているのである。
 では、そのEVのマイカーとしての適合性はどうであろうか。EV開発への多くのメーカーの参入により、これまでのEVの技術的問題点の克服(例えば、バッテリーについての、容量増加、充電時間短縮化、経年劣化の抑制など)に向けた技術やシステムの進化が急速に展開し始めている。EV用のインフラとしての充電ステーション数や質の充実、自宅での充電設備・システムの進化も不可欠である。そうしたEVの問題点の改善レベルを踏まえつつ、筆者自身の条件との適性を検討しよう。
(1) EVの航続可能距離の限界について
 自動車の航続可能距離とは、燃料を満タンにしてから、燃料を使い切るまでに走行できる距離をいうが、EVでは「燃料を満タン」を「満充電」で置き換え、「燃料を使い切る」を「蓄電残量がゼロになる」で置き換えることに当たる。現在、日本で入手可能(予定)な市販の代表的EVでは、公称でテスラ・モデル3(60kWh)が418km、LEAF第2世代(40kWh)が400km、BMW i3(33kWh)が390km、VW e-Golf(36kWh)が301kmというところであろうか。すなわち公称での航続可能距離は300~400km程であり、実際の走行条件下では200~300kmと考えておくのが妥当である。
 さて、その場合の筆者のマイカー利用スタイルでは、すでに退職しており、月間の走行距離は600~700kmほどであり、しかも近隣でのショッピングストアや公園、運動施設、文化施設へのトリップである。ガソリン車によるスタンド利用は月1回の満タンのペースであったので、EVでは月3回程度の満充電を想定すれば実用上問題はないと思われた。
(2) EVの充電頻度と充電時間の問題について
 すでに前項で検討したように3回程度の充電を充電ステーションで行うとして、急速充電でも1回当り30分を要することになる。しかも急速充電ステーションでは80%が上限になることから「月4回程度の急速充電にステーションでの30分の待ち時間を要す」ことになる。このことは時間的な負担となることは明らかであるが、生活時間としてそして心理的な負担がどれほどのものとして受け止めることになるのかは推測が困難であった。その利用する充足ステーションがディーラーのサービス店舗なのか、ショッピング施設での買い物中の時間活用で行えるのかによっても負担意識は大きく異なるであろう。
 退職後のくらしの中であることを考慮すると大きな負担にはならないと考えたのである。
(3) バッテリーの経年劣化問題について
 EVで採用されているバッテリーはリチウム・イオンバッテリー(LiB)であり、これまでのEVでは変更されていない。LiBはその重量/体積当たりのエネルギー密度が、他の鉛、ニッカド、ニッケル水素バッテリーに比べて格段に高く、輸送機械用途には最適とされている。ただし、安全性や耐久性など克服すべき課題もあったが先進的な技術開発で進化しているという。今回焦点としたLEAFの場合、そのバッテリーは日産とNECが共同出資で2007年に設立したオートモーティブエナジーサプライ㈱(AESC)により提供されてきており、顧客対応ではLEAF第1世代では5年間10万kmのバッテリー保証が、8年間16万kmに拡大している。
[No.108] 人間生活と技術(5) 電気自動車(EV)に魅せられて(その1)_b0250968_13245074.jpg またLiBの特質としてその劣化は避けられないのであるが、性能の落ちたLiBを再生利用したり他の用途である再生エネルギーの貯蔵や災害時のバックアップ電源用などに二次利用することにも住友商事と取り組むための新会社フォーアールエナジー㈱(図2)を原発事故被害の象徴である福島県浪江町に設立しているという。社会的な資源活用システムとして大いに期待したいし、後述するが、今回の著者のLEAF取得に当たっては住宅用電力供給手段としての役割も考えているので、望ましい方向のシステム開発といえるのである。

 以上から、筆者のマイカー買い替え取得対象としてもEVという選択肢が視野にとらえられたのである。もちろん、高齢ドライバーに足を踏み入れることとなり、自身のマイカー遍歴車種の流れから、車自体の在り様の従来からの4軸による総括を受ければ、「“命をまもる”、“財布をまもる”、そして“しっかりとした造り”、“人への優しさ”」のすべてにわたってポジティブに進化した車をより強く志向するのは当然であった。
                                 [2018/12/1記]
================ No.109 その2につづく ================

by humlet_kn | 2018-12-01 11:49 | 解かる | Comments(0)

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