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[No.96] 人間生活と文化(9):音楽とともに(2) ― オーディオ・ライフをふり返る(2)

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◆つくばでの生演奏の体験が更なるシステムアップに導く◆
 私のオーディオに関する次の節目は、就職して8年後に職場が新しい街「筑波研究学園都市」に移った(1979年)後、まもなくであった。住居も借家ながら公団住宅風のコンクリートのアパートに移り、LDKのリビング空間部も10畳ほどになって、オーディオを楽しむ環境ができたのである。そこでマイ・オーディオの改造は、これまでのシステムで最も不十分さを感じていたレコード音源の入口であるレコードプレーヤーの更新であった。これまでの[No.96] 人間生活と文化(9):音楽とともに(2) ― オーディオ・ライフをふり返る(2)_b0250968_18284816.jpgターンテーブルはベルトドライブであったがその経時的劣化や回転音ノイズなどが気になってきていたのでダイレクト・ドライブを採用したのである。またカートリッジは入門機向けであったため、より高品位の音質を求めて、中級機向けとして定番となっていたSHURE製に変更したのである。
 Recode Player:  (1981/01)
 Turntable & Phono Arm:
 Victor Electro Servo Player QL-Y5
 Phono Cartridge:  SHURE M44G

[No.96] 人間生活と文化(9):音楽とともに(2) ― オーディオ・ライフをふり返る(2)_b0250968_182951100.jpg これにより、わがLD空間は、娘たちのための小さなグランドピアノも置いたのでそれほどの余裕はなかったが、音楽を楽しめるバランスの取れた音楽空間と思えるようになり、私にとっては大いなる深化であった。
ここで併せて、このつくば市における暮らしの中で、私にとって重要な意味をもつことになった音楽体験を紹介しておこう。つくば市は国の科学技術振興政策によって「筑波研究学園都市」として1960年代から構想、計画され筑波大学(1973年)を先頭に各省庁傘下の試験研究・教育機関の移転が始まり、1980年に43機関の移転が完了した。そうした中で街としての中核である「つくばセンタービル」が開設(1983年)され、1985年には国際科学博覧会(TSUKUBA EXPO)が開催されたのである。
[No.96] 人間生活と文化(9):音楽とともに(2) ― オーディオ・ライフをふり返る(2)_b0250968_643390.jpg さて、音楽との関わりでは、そのつくばセンターのシンボルとなった「ノバホール」(1983年より)(写真)の存在が重要であった。建築家・磯崎新の設計による中規模(大ホール:座席数1000席)の音楽ホールであったが、その空間構成の気品・モダンさと相俟って演奏会場としての音響効果のすばらしさで知られた。このホールは、この新しい街の住人として移り住んできた文化人の主体的活動によって支えられた「つくば国際音楽祭」が1985年以来毎年、開催されてきたのである。このノバホールでは、内外の著名な音楽家(ヤーノシュ・シュタルケル、メラニー・ホリデイ、ペーター・シュライヤー、小林道夫など)の演奏を、恐らく東京公演の2割位(?)安く、しかも近隣の日常生活のリズムの中に組み込む形で気軽に楽しむことができたのである。その中でも印象深い音楽体験は、「マタイ受難曲」 (1993年?) であった。その演奏者や演奏曲の詳細の記憶(記録)がないのが残念だが、ジョゼッペ・シノーポリ(?)の指揮で、ノバホールの決して広くない舞台一杯に楽団員、合唱団員そしてソプラノ、アルト、テノール、バスのソリストが並び、バッハの純化された宗教曲の透明な音色がホールに響き渡っていったという印象が残っている。
また、演奏会体験という意味では、声楽については、ロッシーニの歌曲で国際的な名声を獲得し始めたC.バルトリの東急文化村での初来日公演「モーストリー・モーツアルト」(1992年)の圧倒的なインパクト、そしてオペラについては、海外出張時のプラハ国立歌劇場での「魔笛」(1987年)、国内では東京での英国グランド・オペラ「カルメン」(1989年)、バイエルン国立歌劇場のサヴァリッシュ指揮/市川猿之助演出「影のない女」(1992年) 、[No.96] 人間生活と文化(9):音楽とともに(2) ― オーディオ・ライフをふり返る(2)_b0250968_457112.jpg教会音楽としては、ブリュッセルのサン・ミッシェル大聖堂写真)で行われた没後200年(1991年)のイベントとしての宗教曲「モーツァルトのレクイエム」を通して、舞台/教会という大空間での音楽芸術にも入り込んでいったのである。
このような生演奏の音楽体験を様々なジャンルで積み重ねてゆく中で、手持ちのオーディオ・コンポの更なるステップアップのためには中核となる[No.96] 人間生活と文化(9):音楽とともに(2) ― オーディオ・ライフをふり返る(2)_b0250968_8395694.jpgプリメインアンプの格上げが不可欠と考え、素直で締まりがあり、余計な装飾をしないが、しっかりとした音作りを感じたSONYのものを選定した。これにはSONYという会社への信頼感の高さも手伝っていた。そして、Open Reel Tape Recorderの使い勝手の煩わしさを踏まえて、Cassette Tapeによる録音への切り替えを図ったのである。
[No.96] 人間生活と文化(9):音楽とともに(2) ― オーディオ・ライフをふり返る(2)_b0250968_8495693.jpg Stereo Cassette Deck SONY TC-K222ESJ (1994/10)
 Integrated Amplifire SONY 中級機 TA-FA5ES  (1995/01)


◆越後での音響・映像システムがもたらしたもの◆
1995年4月、転職に伴い、つくば市から新潟県長岡市に居を移した。つくばと同様の借家の公団住宅風のコンクリートのアパート住まいであったが、LDKの空間は狭くなり、SPも以前のようなやや大型のブックシェルフ型を置くことが難しくなったのに加えて、サイドボードの上にSPを含めてコンポシステムを設置するレイアウトに変更することにした。コンパクトなSPを「テレ音」で視聴を繰り返して絞り込み、[No.96] 人間生活と文化(9):音楽とともに(2) ― オーディオ・ライフをふり返る(2)_b0250968_21482248.jpg英国のSPENDOR社製に辿りついたのであった。また、それを転機に、チューナーの更新、レーザーディスクプレーヤー(LD/CDの再生)の購入を行った。また、既に保有していたSONYのblack faceのプリメインアンプと同シリーズのチューナーへの置き換えを行った。
 SP: ブックシェルフ型 SPENDOR SP-3/1P (1996年) 
  (低域 16cmコーン型ウーファー
   + 高域 1.9cmソフトドーム型トィーター;
   65Hz〜20kHz ±3dB; W220×H400×D280mm;
   バイ・ワイヤリング対応)
[No.96] 人間生活と文化(9):音楽とともに(2) ― オーディオ・ライフをふり返る(2)_b0250968_21504038.jpg Tuner: 中級機 SONY ST-S510 (1997/07)
 Laser Disk (& CD) Player: PIONEER CLD-R7G (1997/07 ?)


[No.96] 人間生活と文化(9):音楽とともに(2) ― オーディオ・ライフをふり返る(2)_b0250968_21515955.jpg
 その結果、長岡での更新後のわが家のオーディオ環境は一段落したのである。
 この頃の私の音楽の指向としては、長岡在住ということもあって地元での音楽会への参加は限られることになった。市内の音楽ホールとしては、かなり年月を経た町はずれの旧市街地の市民劇場と信濃川の川西リバーサイドに新しく設けられた公園エリアの一画の「長岡リリックホール」があったが、新潟市から60km離れていることもあり、著名な音楽家の演奏会が催されることは少なかったのである。そんなことから、私の日常的な音楽体験の中心は、従来のレコード、FMに加えて、レーザーディスクに傾注することになったのである。既にこれまでも述べてきたが、オペラを楽しむという点では、レーザーディスク・プレーヤーが大活躍することになって、モーツァルトのオペラのLDをかなり揃えたりした。
 また、長岡在住中の生演奏の音楽体験としては、クラッシックでは残念ながら印象深いものはないが、内外の民族音楽については、いくつか特記しておきたい。まずは、新宿でのアントニオ・ガデス舞踊団(ガデス自身を含む)の「アンダルシアの嵐」(1997年)のフラメンコの民族舞踊としての圧倒的なインパクト、そして、海外出張時に体験したタイ国の国立劇場での伝統的なラーマキエン由来の舞踊劇(1996, 1999)や中国人コミュニティによる京劇、インドネシアのバリ島のガムラン(2010/11)、カナダのトロントでの本場のミュージカル体験(2001/08)、[No.96] 人間生活と文化(9):音楽とともに(2) ― オーディオ・ライフをふり返る(2)_b0250968_220414.jpg米国ニューオリンズの街中にあふれるジャズ写真:Preservation Hallでの演奏会)の活気と哀愁を醸し出す調べ(2001/08)などがあった。翻って長岡周辺では、佐渡の鼓童の和太鼓による躍動、盲目の女旅芸人が三味線を携え唄った「越後の瞽女唄(ごぜうた)」、柏崎の500年の歴史をもち、初期の歌舞伎の様相を残すといわれる芸能舞踊「綾子舞」、そして富山県八尾の哀愁を帯びた胡弓の音色と男女の農民踊りの「おわら風の盆」などが、印象深いものであった。

 これらを背景とした、私のオーディオシステムの再構築結果の統合的な音質の特徴は以下の通りであった。音源の入口、音量増幅・音質修飾、そして出口の全段を通して、中級機のレベルを達成し、中音域・高音域の締まりとクリアーさ、そして一定の厚みを引き出してくれた。ただし、低音域や瞬間的な音の立ち上がりやインパクトは十分とは言えなかった。特に、宗教曲での通奏低音、フラメンコなどでの床面の衝撃音などで弱点があったように思われた。一方、オペラやアリアなどでの人の声、特に女声の豊かさ、繊細さには見るべきものがあったと思っている。もちろん、オペラや舞踊音楽ではLDという当時としては高画質の映像再生の手段を手に入れられたことは、喜びであった。

 その後、長岡での仕事も終期が近づいた頃、映像と音響の統合的記録媒体としては、DVDが進化し高画質のBlu-ray Diskが定着しつつある中で、LDの映像ソフトも急速に減少し、ついにLD Playerの製造も中止される事態至った。これにより、音響・映像の記録・再生用に以下の機器の購入を図り、LD Playerからの乗り換えを図ったのであった。
 Blu-ray Disk Recorder ( & DVD / DV) Panasonic DMR-BW850 (2009年製)

◆そして定年退職を経て今・・・◆
 私自身の定年退職は、2012年3月末であった。これを契機に、実家の旧家屋を建て替え、鎌倉に戻った。当初はLD空間(30㎡=18.5帖)に、長岡から持ち込んだTVとAV(音響・映像)システムを、そのまま配置していたが、木造で空洞の内外壁体を有する特殊な建築構造とより大きな容積の室空間のためか、音場の締まりが甘くなり、長岡での音響のレベルには届いていなかった。そして5年目を迎え、家族構成の変化に伴う、宅内の各部屋の利用形態の見直しを図ることになり、家族の共有空間としてのLD空間の他に、書斎を兼ねた個人空間(11.3㎡=7帖)でのオーディオ環境を再構築することにしたのである。
 それぞれのオーディオ環境のねらいを定め、
 ①これまでの手持ちの音響システムを、共有(LD)空間の建築構造に適合させ、くつろぎの際の視聴を前提とした、より高品位のAVシステムに改変すること
 ②個的(書斎)空間に、デスクトップのPCを設置しつつ、そのデスク上に配置でき、しかし、FM放送やCD再生を中心とするコンパクトだが、できるだけ価格・性能比の高い音響システムをあらたに導入すること
を目指した。[No.96] 人間生活と文化(9):音楽とともに(2) ― オーディオ・ライフをふり返る(2)_b0250968_57212.jpg
 そこで、そのねらいの実現に向けての戦略は以下のようであった。
 ①についてのシステム改変戦略の主体を、Pre-main Amplifireの買い替えとSpeaker の潜在能力を引き出すことに集中した。特に後者については秋葉原に行き懐かしい「テレ音」写真)で視聴や相談をさせてもらった上で、最終的には量販店の視聴室での聞き比べにより判断した。
 ②については、コンパクトさを追求したIntegrated ReceiverとBookshelf-type Speakerを、ネット上の解説や口コミと量販店の視聴室での様々な組み合わせによる絞り込みに傾注した。
[No.96] 人間生活と文化(9):音楽とともに(2) ― オーディオ・ライフをふり返る(2)_b0250968_974124.png 選択結果の具体的な構成は、
 ①について: 新規に
 Integrated Amplifire: Marantz PM8005
  Insulator: ハイブリツドインシュレーター
[No.96] 人間生活と文化(9):音楽とともに(2) ― オーディオ・ライフをふり返る(2)_b0250968_992585.jpg  (6個1組)audio-technica AT6099

を購入し、既有の
  FM/AM Tuner: SONY ST-S510
  Blu-ray Disk Recorder ( & DVD / DV):
    Panasonic DMR-BW850
  SP: ブックシェルフ型 SPENDOR SP-3/1P 
との組み合せ[No.96] 人間生活と文化(9):音楽とともに(2) ― オーディオ・ライフをふり返る(2)_b0250968_5281580.png
 ②について:
  Network CD Receiver: Marantz M-CR611
   CDプレーヤー/FM / AMチューナー
   /ネットワークオーディオ対応
[No.96] 人間生活と文化(9):音楽とともに(2) ― オーディオ・ライフをふり返る(2)_b0250968_1533441.jpg  SP: ブックシェルフ型Camblidge Audio SX-50
   (25mm silk dome tweeter
    / 135mm treated paper cone
    / Mid/Bass Driver; 50Hz - 22kHz;
    W161 x H225 x D240 mm)
  Insulator: ハイブリツドインシュレーター(8個1組)
    audio-technica AT6098
であった。
 このように構築された音響システムに対する印象は以下の通りである。
[No.96] 人間生活と文化(9):音楽とともに(2) ― オーディオ・ライフをふり返る(2)_b0250968_1535577.jpg ①については、今までのシステムに比べて、“異次元”の奥行き感、空気感が創出され、透明感も高まったのである。その結果として、Record Playerの再認識Spendor SP-3/1Pの底力・実力の実感があった。前者では同じRecord Playerから取り込まれた音源にもかかわらず新たな音像が提示されたし、[No.96] 人間生活と文化(9):音楽とともに(2) ― オーディオ・ライフをふり返る(2)_b0250968_15374687.jpg中音域中心と感じていたSpendor SP-3/1Pから、通奏低音やオーケストラの音源の3次元的広がり、生みだされる空気の張り・振動感を聞き取ることができるようになったのである。そんなことから、最近はバロック音楽や合唱曲そしてカンタータなどの宗教曲の音色を味わう楽しみも追加されて来ている。

 ②については、まずは、Marantz M-CR611の価格比での高機能・高性能性に驚いている。Internet Radioの音質の高さと24時間鑑賞可能なクラッシック等の国際的な選択チャンネルの豊富さは、新たなオーディオ世界を私に期待させてくれた。そしてCambridge Audio SX-50のコンパクトなボディから湧き出る英国サウンドは、音作りの基本がSpendor SP-3/1Pと同系統であること(もちろん迫力には欠けるが)を確認させてくれたし、私にとっては心地よいものとなっている。その実力のうちに、机上におかれたコンポ・ステレオがサポートしてくれるデスク/PCワーク時の低出力の環境音の質の高さがある。

当面のオーディオ・システムの手直しは、①についてスピーカーのバイ・ワイヤリング化の効果の確認である。そして、さらに、このオーディオ・システム再構築により、魅力を実感した音楽のジャンルの広がりの中で、ライブの音楽演奏会、オペラ公演などへの参加の機会を増やして行ければと思っている。                            <20017/09/28 記>
================  完 ================

by humlet_kn | 2017-09-27 18:30 | 出あう | Comments(0)

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